ボサノバの何ともいえない魅力のもう一つは、その和音(コード)構成にある。ブラジルの音楽、サンバや彼らの民謡にはない、非常に洗練された和音構成がボサノバにはあるのだ。
ボサノバは1960年ごろ、ブラジルのピアニストAntonio Carlos Jobimと、ギタリスト・歌手のJoan Gilbertらが作り上げた新しい音楽だ。Jobimはジャズ、或いは現代音楽のラベルやドビッシーなんかに影響受けた人だ。そしてGilbertもブラジルの民族音楽をやりつつもジャズの影響を受けている。ということから、和音の作り方にはジャズの和音が多いに流れ込んでいる。少し専門的な話になるが、ドミソの上にラとか上のレを調味料として重ねるいわゆる「テンション」音の多用、マイナーセブンスから4度上のセブンスに移るいわゆる「4度進行」、これらは両方ジャズからの直輸入。そして、ジャズでも出てくるが、「デミニッシ」という和音を経過和音として非常に多く使うことに特徴がある。しかし、実は、ジャズよりもボサノバの方が、より自由に新鮮な和音の動きを使っている。はっきり言って、和音に関しては、古典的なモダンジャズよりボサノバの方がカッコいい。
なぜ、ボサノバではこのように独自のカッコいい和音を使うようになったのか?その答えは、ひとえにギターにある。ジャズの作曲・編曲する人は大概ピアノ系の人だ。ところが、ボサノバを発明したJoan Gilbertはギタリストであった。彼は、サンバのやかましい打楽器を遠ざけ、ギターだけでボサノバ独自のリズムを刻む奏法を編み出したと共に、あの囁くようなボサノバの歌い方を始めた。そして、彼が編み出したボサノバの和音の進み方は、ギターで弾いてみると、非常に自然。ギターの左手が自然に一つづつ下にずれて来るといった感じで、ギターから生み出された和音構成なのである。このことから、ピアノ中心のジャズの和音方式とは異なって、一番下のベース的な音も3度や、減9度などという、ピアノやオーケストラでは余り出てこない手法が、ギターの指の都合上、頻繁に出てくる。そして、それが独自の超カッコいいサウンドを生んだのだ。
曲をご存知ない人には意味不明だろうが、「飛行機のサンバ」(Samba Do Aviao)という曲にしても、最初の <ミド、(上の)ソシ> (この4つの音を和音として一緒に弾く)、次に <ミbドソbラb> という和音を、ピアノかなんかで弾いてみて欲しい。この最初の2小節の美しさだけでも、何百回も弾くのに値する。事実、私は本当に何回も弾いてしびれている。また、一番有名な「イパネマの娘」のさびの部分の和音の進行は、ジャズではまず生まれ得なかったであろうと思うくらい斬新かつカッコいい。それもこれもギター感覚に根ざしたボサノバの生んだ発明だ。
という訳で、ボサノバは、ブラジルのリズム感と、ジャズの和音感覚が、ラテン系の国ならではのギターという楽器において融合され、独自の超カッコいい世界を作ったものといえる。そして、Joan Gilbertが始め、彼の奥さんAstrad Gilbertが大流行させた、ビブラートなしの囁く声での唱法。今でも小野リサがしっかり受け継いでいる。ああボサノバは超カッコいい。 Nat
ボサノバは1960年ごろ、ブラジルのピアニストAntonio Carlos Jobimと、ギタリスト・歌手のJoan Gilbertらが作り上げた新しい音楽だ。Jobimはジャズ、或いは現代音楽のラベルやドビッシーなんかに影響受けた人だ。そしてGilbertもブラジルの民族音楽をやりつつもジャズの影響を受けている。ということから、和音の作り方にはジャズの和音が多いに流れ込んでいる。少し専門的な話になるが、ドミソの上にラとか上のレを調味料として重ねるいわゆる「テンション」音の多用、マイナーセブンスから4度上のセブンスに移るいわゆる「4度進行」、これらは両方ジャズからの直輸入。そして、ジャズでも出てくるが、「デミニッシ」という和音を経過和音として非常に多く使うことに特徴がある。しかし、実は、ジャズよりもボサノバの方が、より自由に新鮮な和音の動きを使っている。はっきり言って、和音に関しては、古典的なモダンジャズよりボサノバの方がカッコいい。
なぜ、ボサノバではこのように独自のカッコいい和音を使うようになったのか?その答えは、ひとえにギターにある。ジャズの作曲・編曲する人は大概ピアノ系の人だ。ところが、ボサノバを発明したJoan Gilbertはギタリストであった。彼は、サンバのやかましい打楽器を遠ざけ、ギターだけでボサノバ独自のリズムを刻む奏法を編み出したと共に、あの囁くようなボサノバの歌い方を始めた。そして、彼が編み出したボサノバの和音の進み方は、ギターで弾いてみると、非常に自然。ギターの左手が自然に一つづつ下にずれて来るといった感じで、ギターから生み出された和音構成なのである。このことから、ピアノ中心のジャズの和音方式とは異なって、一番下のベース的な音も3度や、減9度などという、ピアノやオーケストラでは余り出てこない手法が、ギターの指の都合上、頻繁に出てくる。そして、それが独自の超カッコいいサウンドを生んだのだ。
曲をご存知ない人には意味不明だろうが、「飛行機のサンバ」(Samba Do Aviao)という曲にしても、最初の <ミド、(上の)ソシ> (この4つの音を和音として一緒に弾く)、次に <ミbドソbラb> という和音を、ピアノかなんかで弾いてみて欲しい。この最初の2小節の美しさだけでも、何百回も弾くのに値する。事実、私は本当に何回も弾いてしびれている。また、一番有名な「イパネマの娘」のさびの部分の和音の進行は、ジャズではまず生まれ得なかったであろうと思うくらい斬新かつカッコいい。それもこれもギター感覚に根ざしたボサノバの生んだ発明だ。
という訳で、ボサノバは、ブラジルのリズム感と、ジャズの和音感覚が、ラテン系の国ならではのギターという楽器において融合され、独自の超カッコいい世界を作ったものといえる。そして、Joan Gilbertが始め、彼の奥さんAstrad Gilbertが大流行させた、ビブラートなしの囁く声での唱法。今でも小野リサがしっかり受け継いでいる。ああボサノバは超カッコいい。 Nat