民主党政権で岡田副総理が、暫し封印していた全額税方式の最低保障年金制度の話しを持ち出し、その為の消費税増税は10%以上になることに言及。民主党による消費税増税構想は、いよいよ迷走の度合いを深めてきた。最低保障年金制度は、2009年の鳩山民主党マニフェストで提唱していた制度で、個々人が払った年金保険料に応じて給付される現在の公的年金制度(税金からも半分出るが)に加えて、そういう年金がもらえない人にも最低月7万円の年金を全額税金から給付するという構想だ。自民党から「民主党はマニフェストを忘れて消費税増税に走っている」と批判されている民主党だが、岡田はマニフェストに掲げていたこの最低保障年金制度の話しを改めて持ち出すことで、マニフェストとの整合性を醸し出そうという作戦のようだ。しかし岡田は根が馬鹿正直だから、「実はその為には、10%に加えて追加の消費税増税が要る」と言ってしまった。政治戦術的には大失敗だろう。
しかし、ここで岡田が、最低保障年金制度の話しを持ち出さないと民主党の消費税増税を正当化出来ないと思ったその点にこそ、まさに野田民主党政権の消費税増税の苦しさがあると思われる。今一度、2009年8月に民主党が衆議院選挙に大勝した時の鳩山民主党のマニフェストを見てみるといい。子ども手当て、高校無償化、年金改革(上記の最低保障年金を含む)、医療・介護再生、農業所得補償、ガソリン税等廃止、高速道路無料化等などのために必要な16.8兆円を、国の総予算207兆円の全面組み替えで出すと約束したのだ。つまり、国の歳入を、まず、上記のような重点施策に配分、残りの予算をこれまでの施策に配分するという、ある意味で非常に乱暴なまでの予算の組み方の革命、それに伴う各官庁運営方法と国・地方の関係の革命を意味していた。国民はそれに熱狂した。私もそれに賭けた。丁度、アメリカでオバマのChangeに皆が熱狂したのと似ている。
ところが、それから1年も経たない2010年7月の参議院選挙で早くも菅直人が消費税10%増税を言い出すのである。支出増は既に始めてしまっている。その見返りの財源創出のために国の仕組みを変えるのには何年も掛かるのに、1年もしない間に早くもギブアップ、「もう増税で賄うしかない」と言い出したのである。民主党政権の出来る2009年に先立ち、自公政権の時代の2008年から、社会保障の持続のためには安定財源が要ることが指摘され、2009年度の税制改正法では2011年度までに消費税増税を含む税制抜本改革の法制上の措置を採ることまでが謳われた。何のことはない、菅から野田への今の民主党政権は、樹立後1年もしない間に、約束の予算の組替えは早々とギブアップし、その前の自公政権の頃から官僚が取り纏めていた「とにかく消費税などの安定財源確保が必須」という話しに戻ってしまったわけである。要は、現在の年金・医療・介護制度を維持するだけで消費税10%アップが必要という従来の話しに菅・野田が乗ったということだ。
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ではなぜ野田は「不退転の決意」とまで言い、狂ったように消費税増税を強行するのか? 先ずは、前述の通り、民主党独自の子ども手当てや高校無償化などを始めてしまったのに、当初マニフェストで掲げた予算組替えによっての財源を直ぐ出せないので困ってしまったからである。しかしそうは言えないから、予算の組替えを早々と諦めたという話を国民に忘れてもらいながら、民主党政権が何か偉い存在であるかのような印象を醸し出すためだ。つまり「実は、消費税増税こそが、わが国の最大の課題であったのです!それに本気で着手したのは我が野田民主党政権なのです!!」という風に、話しをすり替えた上で、大仰に危機を煽り、自分の政権を良く見せたいからである。
しかし、実は、それでは2008年の自公政権と変わらない。そこに今般、野田よりも若干頭のいい岡田が登場してきた。岡田は、野田のように「このままでは日本がギリシャになる。消費税を10%上げよう!」というだけでは馬鹿みたいだし、自公と変わらないことを知っているのだ。だから、菅政権で、年金の全額税方式に反対な与謝野が入閣してから封印されていた、民主党らしい全額税方式の最低社会保障年金制度を復活させ、2009年民主党マニフェストの独自性に少しでも戻そうとしているのである。しかし、現行社会保障年金制度の維持だけでも消費税10%増税が必要と言うのだから、それに加えて全額税方式の最低社会保障年金制度をやるならば、10%の倍近くの増税が必要なのは当たり前である。ところが、岡田はそれを正直に言う。そうなると、政治的には何のために岡田が最低社会保障年金制度の話しを持ち出したのか分からないことになる。そこが岡田という人の変わったところだ。ということで、いよいよ、民主党の「一体改革」は混迷を深めるのである。
前に書いたとおり、民主党の「一体改革」は見せかけの看板だけで、実際には「増税だけの先行」だ。増税が実現してしまったら、官僚も政治家も安堵するから、絶対に歳出構造の改革はなされない。だから、日本はいよいよ公的保障の異様な肥大化と重税・保険料高負担の国に向かう。若い人が疲弊し、残された成長の芽は殺がれる。長い目で見ると、消費税も増税必須であろう。しかし、それを今、迷走するだけの民主党、増税を先行するだけの民主党にやらせるわけにはいかない。
Nat