★本朝の日経報道で九電・東ガスの千葉の火力発電を石炭からLNGに切り替える検討のことが出ている。また、今後は石炭火力には銀行融資を見合わせる等の報道も多く、それだけ見ていると、もう今後の発電として石炭火力はほぼ消え果て、原発がダメでも太陽・風とLNG火力でやっていくとのイメージを持つ人もいるだろう。

しかし、ここで何度も書いている通り、日本としては、結局、新設を含めた石炭火力に依存しないと国が回らない可能性も高く、自ら石炭の道を必要以上に封じるような政策は国益に沿わないと思う。だから資源エネ庁のHPもまだまだ石炭の道があることを説いている。

そもそも、世界の発電では現在40%ほどが石炭、20%ちょっとが天然ガスであり、圧倒的に石炭。更に、今後2040年位までのIEAの予想でも、中国・インド・インドネシア等の新設発電所は、これまた圧倒的に石炭となる。その分、先進国で可能な国は石炭は控え目にしましょうねという話である。このように、結局、人類が今後とも石炭火力に大きく依存する現実は現実として認識しておかないといけない。その上で温暖化どうするか?という命題だ。

また、多くの人が理解していないのは、温暖化対策で「石炭より天然ガス」という時、その「天然ガス」はLNGと同じではないことだ。世界の発電の2割超が天然ガスと言っても、その9割はパイプラインで引いてくる天然ガスであって、LNGは、天然ガスの中の1割(つまり世界の発電の2%ちょっと)だけのいわば「特殊」なものである。日本のような地理的な環境の場合、天然ガスといっても液化してLNGにするしかない。しかしだ、温暖化問題ひとつとっても、そもそも天然ガスはガス田から猛烈なる温暖化ガスのメタンを放出する問題が隠れているのに、その上、膨大なエネルギーを使って液化まですると、高エネ効率のハイテック石炭火力とのトータルな温暖化ガスの差は、計算によるが、可成りなくなるのである。

にも拘わらず「クリーンなLNG」とかいったイメージばかりが拡がっている。繰り返し言うが、日本はLNGだけではなく、いざという時には、石炭に依存する道も温存しておかないと危ない。銀行が政治的に新規石炭火力への融資出来ない場合でも、必須と思えば、政府が公的融資をしてでも、進められるようにしておかないといけない。そういう問題だ。だから、LNGの実態、石炭の実態、正しい認識を広めておく必要があると思う次第だ。  Nat

●8月11日 加筆:

★昨日、日本の電力が「太陽・風力」+「クリーンなLNG」で、もう大丈夫と思い過ぎることへの警鐘記事を書いた。
● と思うと、今朝の日経で、東電管区でこれだけ暑いのに原発ゼロで回っているのは、家庭の屋根からを含めた大量の太陽発電があるからという記事が出た。実に最大発電量5000万KWの2割相当の1000万KWが、瞬間的にだか太陽光発電だったそうな。
● その辺だけを聞いて、いよいよ太陽・風・LNGで十分という気分が広がるのではと思う。
● 下のエネ庁のグラフを見て欲しい。2011年の福島事故までの緑色の原子力が、ほぼゼロになり、その替わり、何で埋め合わせたか?オレンジ色のLNGが異様に増加、あと、下の方のよもぎ色の石炭だ。太陽・風力の新エネ(上の赤い処)は平均すると非常に小さい。
● 中でも、LNGへの過度の集中になっている点に注目だ。
42%と半分近い! 昨日書いた通り、LNGの隠れた温暖化ガス発生も入れると、ここまでLNGに傾斜する合理的理由はない。むしろ、昨日からコメントしている通り、(シェールガスで供給の幅は広がったものの)LNGは出荷サイドも受け入れサイドもリスク集中があり、日本がここまでLNGに依存してしまっているリスクが懸念されて然るべきなのである。
● そして、日経でも少し書いてはいたが、皆の期待する太陽だが、東電の瞬間最大1000万KW(2割)はお天気次第で急に消える。寒い冬の暖房に寒い曇りの日の太陽発電は無力である。
● 安定した電力は、どう見ても、抜本的やり直しで安全度を高めた新原発、石炭、LNG、その上で、地熱・太陽・風力とくる。このような適正ミックスを目指さないと国が危ない。
● しかし、何度も言うとおり、安倍政権は虚構のエネ計画を下ろさず、本当の課題には全く向き合わず、しかも国民にその点を知らせようともしていない。私は大声でそれへの警鐘を発したい。
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