米中関税戦争。

l 評論の多くは、「現在の米国の堅調な経済」 対 「中国の過剰債務等の構造的弱点」から、トランプの言う持久戦になると中国不利、だから早晩、中国が折れる、というような予想をしている。しかし本当にそうか? については、両国の国力・政治体制等を分析的に積み上げても、案外分からないと思う。

l そもそも米国の目的は何か? 物事の基本すら分からない庶民や、その層に迎合する学者や政治家が、米国の貿易赤字・経常赤字を「負け」と見るトランプの主張を支持するのは所詮「あぶく」のようなものとしよう。しかし、もう少し物事の分かる議員等も敢えてトランプの対中国関税戦争に乗っているとすると、それは、中国が軍事・経済において世界の覇権を狙ってきており、米国の覇権に立ち向かっているのへの危機感があるからだろう。

l そこで、ここからは、近代の米英 対 アジアの歴史を思い起こしてみたい。

(1)明治維新以降、欧米列強に追いつくべく富国強兵政策を展開していったアジアの小国日本に対して、 米英は、やはり白人欧米の仲間国とは異質なものを感じ、日清戦争から日中戦争までの経緯の中で、日本に対し様々な牽制をした。その結果、日本はいよいよ満州・中国進出・支配を進めていった。

(2)斯くして日本は中華民族との戦争を拡げていくが、アジア同士の故か中国人の力を軽視し、野放図に日中戦争拡大をしてしまう。一方、中華民族は、全土において日本に攻められると根強い抵抗戦に出た。日本軍は中華民族の底力を過少評価し泥沼入りする。そして結局、対米英戦争に突っ込んでいったのである。

l 私は、今般の米中関税戦争に、上記の歴史のアナロジーを見る気がする。

(1(1)中国の現在の世界における覇権主義は、歴史の必然でもあり、本気で阻止することには困難が付きまとう。米国は、ドイツに対しては気に入らなくてもここまでしないが、アジアの覇権国中国に対しては、過激なアクションにも出る。それは、100年前にアジアの日本を米英らが牽制した結果、日本の対中侵略を誘発した如く、中国を却って追い込み、過度に刺激するリスクを伴う。

(2)そしてトランプ政権は、アジアの国、中国は、所詮米国の国力で押し切ると音を上げてくると見ているかもしれないが、それこそ、日本が日中戦争で中国を甘く見た目線に通じる。中華民族は存外しぶとい。持久戦に勝たないまでも、決して負けない抵抗力もある。ましてや、共産党の政治力学を考えると、米国に降参し「中国2025年製造ビジョン」等の旗を降ろすことはあり得まい。

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トランプ政権は、上記のような点を必ずしも的確に見据えてはいまい。だからこれからトランプ政権の安易な予想に反した様々な中国側の反応が出てくる可能性が高いように思う。どうだろう。       Nat