★今年は日本の中長期的な「エネルギー基本計画」を更新する年だが、今回の計画は、まさに日本の将来を左右するものとなる。
・・・島国で電力的に孤立している日本、国産エネルギー資源の実質ない日本、それなのに福島事故のため原発が難しくなってしまっている日本、太陽・風にも様々な制約がある日本、しかし、AIや半導体製造などで電力需要が増す一方の世界の中での日本。
・・・政治家がェネルギー談義をする際に、このような厳しい安保意識がなく、「怖い原発や汚い石炭は早くヤメて、美しい太陽と風にしましょう」などとのファンタシーを語る政治家もいまだに多い。立憲何たらという党の人に特に多い。
◆ 今回の計画の方向性として、盛んに報道されているのは、2040年度で、①再エネ4~5割、②原発2割程度、③火力3~4割程度という話だ。(以下報道例参照。)
・・・これらは、経産省官僚が中心で ”有識者"も入れて、尤もらしい数字を語っているものだが、裏付けの各論計画と課題整理が報道されてないので、いまだに「数字ごっこ」の域を出ないのではと、おおいなる懸念を感じる。単に、CO2削減目標に合わせた数字ごっこでしかなかろう。
・・・今日は、再エネの部分について、改めていつもの持論を書いておこう。
◆ 現在、再エネ割合は、いつも語られるちょっと古い2022年度の数字だが21.7%とか言うことになっているが、その内訳は太陽光9.2%、昔からの水力が7.6%、バイオマス3.7%、風力は僅か0.9%、地熱0.3%である。・・・つまり、立憲民主の先生が語る「美しい太陽と風」合計では10%でしかない。・・・・2040年に再エネ4~5割ということは、それを太陽・風を中心でやると、今10%のものを30~40%に増やさないといけないのだ。
・・・太陽光は山肌にまで埋め尽くしているので、今後の更なる増加は、いきおい洋上風力頼みになるのだろう。
◆ しかし、ここが皆、ナイーブな政治家先生たちが分かってないことだが、それは「発電事業」の話に過ぎないのだ。
・・・洋上風力発電所を頑張って作ると、その費用(設備比・維持費)が多少高くても、電気は発電できる。
・・・しかし、問題は、その電気を上手く日本中の電力系統に送り込んで、企業・家庭に問題なく届ける、そこに大きな難関があることだ。
・・・日本の電力業界は、2016年に自由化してしまったが、流石に送配電事業部分は引き続き地域電力会社が担っている。しかし、自由化前は、その地域の発電・送配電・小売りを地域会社の独占にする見返りに、中長期的に安定的供給が行われるための、特に金のかかる発電・送配電インフラへの投資は、地域電力会社の義務であったのだ。その見返りに資本見合いの電気代・利益の保証があった。これを破壊してしまったので、今や送配電事業インフラへの整備は、日本中で集団無責任体制なのである。
・・・勿論、それではいかんということで、半官半民の電力広域的運営推進機関が作られ、「集団無責任状況」をもう少し計画的に「調整」する役割を負うてはいる。
・・・しかし、しかし、いまや自由化で、インフラ投資は個々の事業者の「商売として成り立つこと」が大前提で、儲からないインフラ投資は、誰もやりたがらないのだ。
◆ 再エネ電力は発電までは出来るのだが、それを需要家に送り届けるまでが難関と書いた。それをもう少し説明すると:
①送電インフラ: だいたい洋上風力なんてのは場末に設置する。しかも原発みたいに一個の塊が必ずしも大きくないので、各地に分散している新しい風力発電所とかから、電力系統にまで送電する大変な送電インフラが要る。
②系統充電インフラ:系統にまでたどり着いても、電力は風まかせだから、発電所における充電システムに加えて、系統サイドでの膨大な充電インフラが要る。
③系統への統合インフラ: 充電システムからの電気は直流、発電所からのもギザギザ疑似交流、それをキレイな正弦波の50、60Hzの交流電力系統に問題なく統合するためには膨大なインバーターなどのインフラが要る。
・・・しかし、これを誰もやりたがらないのだ。
1)非収益性のインフラ: 送電インフラや蓄電設備は直接的な収益を生み出しにくい。
2)民間送配電会社(地域電力会社)の短期収益圧力に反する: 2016年の自由化で、地域電力会社の収益の保証はなくなり、自由競争になったから、電力会社も長期的に要るかも知れないインフラ投資なんて余計なことはやらないのだ。
3)地域横断的計画の難しさ: 最後にこれだ。
◆だからだね、太陽・風力で、新しい場末の発電所を作るところまでは出来るかもしれないが、それを系統に送り、問題なく活用するための膨大なインフラを誰もやらないから、結局、太陽・風をこれから今の10%から30~40%に増やすのは夢のまた夢なのだ。
・・・あるいはそのインフラ投資の見返りに、需要家(企業・家庭)に新たな「再エネのインフラ投資賦課金」をチャージすると、投資が進むかもしれないが、電気代はかなり上がる。
・・・以上のような議論が本当は侃々諤々と必要なのであるが、どうもその辺は避けて通り、看板だけ「太陽・風を30~40%」とか掲げているものとしか思えない。
◆ それでは、日本の将来の電力が危うい。はっきり言って非常に危うい。しかし、気が付いている政治家はまだ少ない。 Nat
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