


だから、そもそも、ドイツとしては人類の平和を脅かす恐ろしい戦争をしたという意識はないし、英仏、或は後に参戦する米からしても、言ってみれば、これまでの欧米白人国家同士の通常戦争の延長であった。通常の戦争で負けた国が勝った国に賠償金を払うことはあっても、「謝罪」することはない。唯一、ドイツの犯した恐ろしい罪は、戦時中に同時に行われた「ナチスのユダヤ人ホロコースト」だというわけである。だからこそ、ドイツは戦後一貫して「罪はナチスのホロコーストにのみあり」との立場を貫き、ホロコーストだけを謝罪するのである。栄誉あるドイツ国防軍は、結果は負けたが、国のために第二次世界大戦を戦い抜いたとの位置づけなのである。戦後のニュルンベルク裁判でも、専ら、このナチスの人道的犯罪(C級の罪)が問われた。ドイツ国防軍が2000万人以上のソ連人・ポーランド人戦死者を出したことは主なる大罪としては問われていないのである。

日本は、中国・アジアで2000万人の死者を出した(うち千数百万人が民間人)。しかし、宣戦布告をし合って戦い負けたのは、米英に対してである。戦後、戦勝国米英は、このような日本を裁くが、その東京裁判では中国・アジアへの侵略の罪(A級の罪)が主であった。要するに、日本軍が中国・アジアを侵略し2000万人を虐殺した罪を、米英が代理で裁いたのである。

