♪♪ NATの独り言 (心・ジャズ)

生きていく上で信じてること。大好きなジャズのこと等

2006年11月

ジャズがカッコいいとしたら、それは何故? 完

笑顔 ジャズがカッコいいのには理由がある。それは、ジャズという音楽に、前へ前へと進みたくなる前進エネルギーの仕組みが幾つも埋め込まれているからだ。この項では、そのことを書いてきた。アフタービートで煽られる。前のめりに攻めるシンコペーションのエネルギー。ブルーノートの不安定さが前に進まざるを得なくさせる。和音にもテンションが入って、そこにじっとさせてくれない。そして根本的に4度進行、そうあの「減5度」エネルギーで、ぐんぐん引っ張られる。それがジャズの強烈前進エネルギーだ。

びっくり でも、こんな難しいこと言っても、全然わからないでしょう。そんなこと言うより、この曲、この演奏がジャズだ!という一曲を紹介してよ、と言われそうだ。では、一曲だけ紹介して、と言われると間違いなくこれをという演奏を紹介しよう。曲は、案外、有名で誰でも知っている「酒とバラの日々」。そうヘンリー・マンシーニ作曲の有名曲。ムード音楽にもよく使われるあの曲だ。あの曲を、ジャズピアノの巨匠、オスカー・ピーターソンが彼のトリオで弾いているのがある。日本でもポリドールから出ているアルバムで「The Oscar Peterson Trio / We Get Requests」という有名曲のリクエスト演奏のレコード・CDがあるが、その中に入っている1曲だ。その演奏を聴いてみてほしい。裏にびしびし入るアフタービート、前に攻めるシンコペーション、ブルーノート、テンション、そして当然全て4度進行。これが、ピーターソンの超人的な迫力ピアノで展開される。この演奏を聴いて、ジャズの前進エネルギーに圧倒されない人は先ずいるまいと思われる。それほどの前進エネルギーだ。他の曲も全部いいので、探して買ってみるといい。絶対いいから。(ついでに言うと、あのレコード・CDは、1964年の録音だが、録音品質の素晴らしさでいつまでも有名なものだ。絶対買って損はない。) にっこり Nat

ジャズがカッコいいとしたら、それは何故? その5

笑顔 ジャズの「前進エネルギー」の仕組みについて書いてきた。今回は、いよいよ「前進エネルギー」の“本丸”の話しをする。それが「4度進行」。なんていうと、難しい話みたいで読む気しないでしょ。でも、これなんです。ジャズは。

譜面 「4度進行」って何かというと、ジャズの曲の裏で流れている、和音の動きで、ジャズミュージシャンがとにかく大好きなパターン。これが「4度進行」。でも4度進行そのものは、全くジャズ特有でもなんでもない。少なくともクラッシックを中心とする伝統的西洋音楽の基本中の基本だ。では、4度進行って一体何?と思うだろうから、じらさずに言うと、例えば「ソシレファ」(ハ長調で言うとG7)という和音が「ドミソ」(ハ長調のC)という和音に移っていく、その「移りたい」というエネルギーを秘めた和音進行だ。ちょっとギターなどで和音をかき鳴らす人なら分かるだろう。G7を鳴らしていて、それで終わったら欲求不満になる。G7はちゃんとCに移らないと収まらない。Gの4度の上の音がC。要するに、4度上の和音に移らないと気が済まないので、4度上の和音に移りますというのが4度進行なのだ。

はてな 何故、4度上かというと、もう少し和音の中身に立ち入って知る必要がある。「ソシレファ」が何故先に進まないといられないかというと、それは、中に「シ」と「ファ」という最高に収まりの悪い音程間隔を持っているからなのだ。ピアノのある人は、「シ」と「ファ」だけを弾いてみるがいい。なんとも不安定な音程でしょ。難しい言い方は避けたいが、この音程は「減5度」と言われる滅茶苦茶に不安定な音程なのだ。二つの音の周波数の噛み合わせが非常に悪い。そのままずっと鳴らされていると、欲求不満になる。「お願い!早く次に移って」と誰でも感じる微妙な音程、それが「シ」と「ファ」の「減5度」なのだ。

びっくり この「シ」と「ファ」は、どこに落ち着くのか? 次に移る時、音の動きとしてとにかく「半音隣り」に行くのが一番簡単でしょ。そこで、「シ」と「ファ」はどうなるかというと、「シ」は半音上の「ド」に、「ファ」は半音下の「ミ」に移る。「ソシレファ」のうちの「シ」と「ファ」以外の残りの音は「ソ」と「レ」だが、この二つは「5度」という超安定の音程で、別に次に移らないと気が済まないという類ではない。そこで、先ず「ソ」はそのままじっとしてる。そうすると、先ほど言ったとおり不安定な「シ」と「ファ」が「ド」「ミ」に移り、「ソ」がそのままいると、ほら、これで「ドミソ」でしょ。あと「レ」がまだあったが、「レ」はまあそのままで調味料(前にいったテンション)になってもいいし、消えてもいい。要するに、「ソシ(レ)ファ」が不安定な「シ」と「ファ」の為に、堪らず「ドミソ」に移っていくことを分かって頂ければいい。これが4度進行。

譜面 この4度進行、先に先に移りたい、不安定な「シ」と「ファ」の前進エネルギーを利用して先に進む進行、これは西洋音楽の基本だ。しかしジャズではこの4度進行をとにかく非常に多用する、というか、もう曲全体が常に4度進行の連続技なのだ。フィギアスケートのトリプルアクセスを最初から最後までやり続けているみたいなもの。これが、異常に4度進行多発音楽であるジャズの構造なのだ。前進エネルギーの激しい連鎖。これがジャズの強烈なスイングを生む。

笑い なんか、えらい理屈になったが、とにかく、ジャズがカッコいいと思ってもらえれば嬉しい。 Nat

ジャズがカッコいいとしたら、それは何故? その4

笑顔 和音についても、同じようなことが言える。クラッシック等では、きちんとした和音を基本とする。「ドミソ」は「ドミソ」だ。単純明快で、きちんとしていて力強い「ドミソ」の響きには、些かの濁りも迷いもない。もうそれだけで自己完結していて、それだけで終わってもいいという世界だ。

譜面 しかしジャズでは、「ドミソ」にも、きちんとしてない「にごり」というか「色合い」をつける。いわゆる「テンション」と呼ばれる音を加えるのだ。「ドミソ」に加える音(テンション音)は、まずは「ラ」。そして「レ」。「シ」もある。要するに「ドミソラ」「ドミソシ」「ドミソシレ」といった多くの音を混ぜて、一緒にならす。当然、和音としては複雑で、ちょっと濁ったような、パステルカラーのような微妙な響きになる。自己完結しない、なんか、もうちょっと違う所に連れて行ってほしいような気持ちを生む。それがテンションだ。

びっくり テンションは「ドミソ」にだけ入るのではなく、例えば「ソシレファ」にも入る。「ソシレ」に入ってくるテンションは、これまた色々ある。入るテンション音によって、「ソシレファ」が微妙に色々な味に変わる。しかし、それは全て「ソシレファ」の、次の和音に移っていきたい気持ちを高める作用がある。

にっこり このように、ジャズは、和音にも「テンション」と呼ばれる、きちんとしてない、ちょっと変な音を混ぜて、前へ前へ進みたくなる気持ちを高めているのだ。 Nat
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