「ハチの大量死」の本を読んで、認識を新たにした第一点。それは、地上の花という花の多くは蜂によって授粉しているという、多分当たり前だろうが私が全く忘れていた事実だ。麦やトウモロコシなどの穀物は、花粉を風で飛ばして授粉する。あのアレルギー性鼻炎の元の杉もそうだ。しかし、我々の馴染みのフルーツや農作物の多くは、花を咲かせる植物で、蜂を筆頭とする昆虫のお陰で初めて授粉できて、それでもって実がなる。リンゴ、オレンジ、桃、ブルーベリーなどの果物に限らない。その1で書いたアーモンドだってそうだ。そして牛の食べるクロバーもアルファルファも蜂がいないと絶滅する。キュウリ、カボチャといった全てのウリ科植物もしかり。チョコレートの元のカカオだってそうだ。ヒマワリ、レタス、ブロッコリー。勿論ワインの原料のブドウもだ。これらの植物は、蜂がいないと、受粉が出来ない。そうなると、人間の労働者を大量動員して、手で授粉して回るしかなくなる。ヨーロッパ人がアメリカ大陸に移住した時、リンゴの木を移植したと同時に、ヨーロッパから蜜蜂を連れてきて授粉したという話も書かれている。・・・・私はこれらの話しを、何ひとつ知らなかった。なんという無知のまま、リンゴジュースを飲んでいたのだろう。
そして、そんなに超重要な蜂を、人間が無神経に死滅に追いやっていることも全然知らなかった。養蜂家は蜂のことを研究しつくして蜂のことなら何でも分かっていると思っている。それだから、平気で長距離に移動させたり、プラスチックの巣の板を使ったりしてきた。農薬のメーカーは世界に冠たる大企業。アメリカのFDAなんて官庁にも頭のいい科学者がいっぱいいて、何が安全な農薬かを研究している。ところが、自然の仕組みは、このような頭のいい研究者たちの想定をはるかに越えて、思いもかけぬような相互連関で出来ているものらしい。浸透性農薬の毒性を試験した農薬メーカーやFDAは、蜜蜂がそれを摂取することまでは想定していなかったのだろう。だから今ごろそれが問題になっても、もう今さら気がつきませんでしたとは言いにくくなる。大規模養蜂家もコーンシロップで養った蜜蜂が、自然の蜂とは違い免疫力が低下するとは思わなかったのだろう。そこで、そのことに気がつくと、今度はウイルス消毒のための殺菌剤を大量に巣箱に吹き込む。もうそうするしかない。もはや、自然のバランスの範囲での養蜂では、大規模農業の授粉ニーズに追いつかないのだ。農業は超マスプロ化し、自然のバランスを大きく越えている。しかし一旦そうなったら、不自然・人工の連続業で行ける所まで行くしかない。それがアメリカの大規模農業の必然的帰結のようだ。
私は、そういうことが起こっていることを全然知らなかった。一方、私は、変に「自然」を主張するエコ至上主義者にも辟易とする。科学、技術で活かせるものは活かしてでも、食糧を生産しないと、人類皆が食っていけない。そのことは、去年の6月にこのブログで連載したとおりだ。純粋水栽培のトマト工場でも、皆が飢え死にするよりいい。しかし、人間はちょっとこの「技術」「人工的システム」に溺れている面もあるのではないか。自然の仕組み・システムには人間がまだ理解していない面が色々あり得るという、自然に対する謙虚さがもっと必要ではないか。「ハチの大量死」の本は、そのことへの強烈な警鐘である。 Nat
追記: 今日(7月1日)の報道で、海外における蜂の病気のせいで、日本への女王蜂の輸入が出来ず、日本のさくらんぼの授粉に支障が出ているとの話があった。日本にも影響が出始めているみたいだ。 Nat
そして、そんなに超重要な蜂を、人間が無神経に死滅に追いやっていることも全然知らなかった。養蜂家は蜂のことを研究しつくして蜂のことなら何でも分かっていると思っている。それだから、平気で長距離に移動させたり、プラスチックの巣の板を使ったりしてきた。農薬のメーカーは世界に冠たる大企業。アメリカのFDAなんて官庁にも頭のいい科学者がいっぱいいて、何が安全な農薬かを研究している。ところが、自然の仕組みは、このような頭のいい研究者たちの想定をはるかに越えて、思いもかけぬような相互連関で出来ているものらしい。浸透性農薬の毒性を試験した農薬メーカーやFDAは、蜜蜂がそれを摂取することまでは想定していなかったのだろう。だから今ごろそれが問題になっても、もう今さら気がつきませんでしたとは言いにくくなる。大規模養蜂家もコーンシロップで養った蜜蜂が、自然の蜂とは違い免疫力が低下するとは思わなかったのだろう。そこで、そのことに気がつくと、今度はウイルス消毒のための殺菌剤を大量に巣箱に吹き込む。もうそうするしかない。もはや、自然のバランスの範囲での養蜂では、大規模農業の授粉ニーズに追いつかないのだ。農業は超マスプロ化し、自然のバランスを大きく越えている。しかし一旦そうなったら、不自然・人工の連続業で行ける所まで行くしかない。それがアメリカの大規模農業の必然的帰結のようだ。
私は、そういうことが起こっていることを全然知らなかった。一方、私は、変に「自然」を主張するエコ至上主義者にも辟易とする。科学、技術で活かせるものは活かしてでも、食糧を生産しないと、人類皆が食っていけない。そのことは、去年の6月にこのブログで連載したとおりだ。純粋水栽培のトマト工場でも、皆が飢え死にするよりいい。しかし、人間はちょっとこの「技術」「人工的システム」に溺れている面もあるのではないか。自然の仕組み・システムには人間がまだ理解していない面が色々あり得るという、自然に対する謙虚さがもっと必要ではないか。「ハチの大量死」の本は、そのことへの強烈な警鐘である。 Nat
追記: 今日(7月1日)の報道で、海外における蜂の病気のせいで、日本への女王蜂の輸入が出来ず、日本のさくらんぼの授粉に支障が出ているとの話があった。日本にも影響が出始めているみたいだ。 Nat