そうこうする間に、今回、外務省の元局長などの証言が出てきて、更にどういうことだったのかが明らかになった。非核“2.5原則”という話だ。つまり、そもそも3番目の「持ち込まさず」といっても、陸上に核兵器を上げて設置することまでは禁止。しかし核搭載の艦船が日本の領海を通過したり、日本の港に一時立ち寄りするのまで禁止するのは現実的ではないということだ。もともと、その1でも書いたとおり、米軍は基本的に艦船などに核を搭載しているかしていないかは、肯定も否定もしないという原則をもっている。いわゆるNCND原則。だから、核搭載の艦船が日本の領海を通過とか一時立ち寄りする場合も、日本に事前協議などするわけがない。ところが従来の日本政府は「非核三原則で、領海通過とか立ち寄りの際も日本に事前協議することになっているのに、事前協議がない。だから、一切持ち込みはないということだ」と強弁を張っていた。しかし実は、実際には通過・立ち寄りがあることをうすうす知っていたというのが、今回明らかになった密約である。
もっとも、その1に書いたとおり、1991年以降の米軍は、実際には戦術核を艦船などに搭載しない方式でやってきているようだ。だから、日本の三原則と米国のNCND原則との間の矛盾が表面化する局面は、今のところはない。しかし、いつなんどき米軍の戦術核搭載の艦船がアジアにも来る事態が生じるか分からない。だから、証言した東郷元条約局長が言っているように、しょせん三番目の「持ち込まさず」という原則は、日本の国土の陸上に設置するのは遠慮してもらうとして、艦船の領海通過と港への一時立ち寄りは認めるのが現実的解決法であろう。しかし、今の鳩山民主党政権はそこまでは、踏み切れまい。また、踏み切らないといけないと思わせる差し迫った状況もない。実際には戦術核は今のところアジアに来ないからだ。だから、このテーマを避けるだろう。でも、いつか急にそういう問題が来る。その時の政権が、慌てて苦しむことになるだろう。それなら、今から、じっくり国会で協議し、現実的に「2.5原則」という形に修正しておくのが本来は賢明であると思う。 Nat