ということで人類は、直立二足歩行を始めた。これはヒトという生き物に対して様々な影響をもたらすことになる。勿論、ヒトの致命傷である「腰痛」などという、他の動物にはないが、私も含めたヒトにはある持病もその一つである。しかし、もっと本質的なことが色々ある。
言うまでもなく、脳の発達はその最たることの一つだ。直立したから、重い脳の入った頭を背骨に乗せて支えることが出来るようになった。猿人は直ぐには脳を大きくはさせなかったが、次第に脳を大きくさせるものが登場する。「人類がなぜ脳を発達させたのか?」は、それ自体、大きなテーマだ。(もっとも発達と肥大化は別もので、脳は小サイズであったホモ・フロレシエンシスの話は2010年2月27日にこのブログで書いた。)脳の発達は、人類が集団で狩りをするようになり、高度の道具を使用するのと、集団で作戦を練り、更に集団で動くためのコミュニケーションをする過程で起こったことというのが、最有力な説明であろう。脳の発達の結果、人類は文明・文化(ハードではなくソフト)という決定的なものを手にすることになる。(2007年4月のこのブログ記事-「人間はどうやって人間に進化したか」をご参照。)更に、肥大化した頭蓋骨でも産道を通れるためには、赤ちゃんは未熟で生まざるを得なくなり、動物の中で他に類をみない子育て問題が発生する。
しかし、下ネタになるので、余りこの点は大きくは採り上げられないようだが、実は直立したことのもう一つの大きな結果は、性器に係わることだと思う。つまり、オスで顕著だが性器がぶらぶらと前に露出する。同じくメスも乳房が前に露出する。このことが人類にもたらしたことは、まず人類だけは体のわりには性器(オスの下半身と、メスの乳房)が異様に大きいということだ。目に見えるから選択の淘汰圧が働き、モノの大きい人がより繁殖してそうなった。また人類だけは対面セックスを標準とする。これも直立して見つめあい、抱き合って自然にそうなった。更に、前面に露出したブツを保護するために、衣服を着用するという動物には見られない風習を始めた。聖書の創世記に出てくるアダムとイブも、知恵の実を食べて最初にしたことは、恥部を木の葉で隠すことであった。人類はもともと温暖な地で進化した。体毛がなくなったくらいだから。そこで、元々は衣服の必要性は薄い。しかし直立した今、そして体毛が退化した今、性器の保護、隠蔽だけは実際的な必要性であったのであろう。
こうやって考えて見ると、440万年前かそれ以前の猿人が、最初は食物を運ぶために直立二足歩行したことが、後の人類のありとあらゆるユニークな特徴に繋がっていることになる。ああ、だから人類の話はめちゃくちゃに面白い。 Nat
