日本はかつて国民一人あたりの所得で、世界1,2位を争う豊かな国になっていた。ところが、国民あたり所得で、1996年から2001年まではの4~6位をうろうろし、バブルが弾けた後の2002年以降は下落の一途。2007年には23位にまで落ちた。国民一人あたり所得の実数を見ると、日本はここ10数年の間ずっと3万数千ドルと横ばいだ。その間に、アメリカは2万4000ドルから4万4000ドルに、イギリスで1万9000ドルが4万ドルに、韓国も7000ドルが1万8000ドルにと、各国は皆所得を伸ばしてきている。ドルと円の為替レートはこの間、概ね100~120円で上下しているだけだから余り関係ない。要するに日本だけが、世界各国が毎年豊かになるのから取り残されているということだ。
そして、国民の中で貧困者が結構多い。OECD諸国の中で見ると、貧困率(国民の収入の中央値の半分以下の収入の人の割合)は、OECD平均が10.6%なのに対し、日本は14.9%と高い。西欧各国では10%以下だ。日本より貧困率が高いのは、アメリカの17.1%(言うまでもなく多数の黒人、ヒスパニック低所得者がいる)とメキシコ18.4%、トルコの17.5%だけだ。しかも、日本における貧困者は増える一方なのである。それが最も良く分るのが、生活保護を受けている世帯数の推移だろう。1980年には75万世帯であったのが、1992年には59万世帯にまで減っていた。ところがその辺から「失われた10年」あるいは「失われた20年」が始まり、そのため2004年には100万世帯を突破。今では130万世帯にまでなっている。典型的には収入が200万円ちょっとしかない人たちが生活保護を受けるが、実際にはそういう世帯は230万あって、そのうち130万世帯が実際に生活保護を受けているという。これらの人たちの多くは、単身の老齢者、あるいは母子家庭である。そして、彼ら・彼女らの自殺率は年間1万人に6人で、通常の倍である。
1990年ごろから、日本はダメになっていった。元気がなくなったのだ。その間、同じような島国で経済成熟国のイギリスは、国家的な成長戦略の推進により、前述の通り国民所得を倍以上にしてきた。日本だけが成長戦略ないまま老衰の一途を辿ってきている。長く続いた自民党政権でも成長戦略を掲げてはきた。しかし、成長戦略は、既存体系の合理化・再編および規制緩和を伴うので、旧態依然たる「抵抗勢力」への政治的配慮をせざるを得なかった自民党には何も出来なかった。そのアンチテーゼを掲げた小泉政権が色々着手したが、「格差拡大」しただけとの偏見の中で終了した。(2009年5月の当ブログ「規制緩和はもうやめか?」をご参照。)
次に今回登場の民主党。もしかしたら、これはもっと成長戦略が出来ないかも知れない。国家の成長戦略は産業を活性化することを意味する。そうなると、勢い企業の活性化になる。そういうテーマは、民主党からすると、とかく「自民党的」だということで基本的にはイヤなのだろう。そこで、エコ・介護などの「地球や人にやさしい」イメージの分野だけに絞って産業・企業の成長戦略を描こうとする。しかもいわゆる「供給サイド」(企業サイド)の施策は企業(資本家??)への支援みたいなので避ける。そして消費者サイドへの後押し(エコする人へのバラマキ)、あるいは介護士などの個人への所得補填などを中心に政策展開しようとする。それは病人に喩えると一時的にホルモンドリンクとか麻薬を飲ませることに近く、全く体質改造にはならない。今回の緊急経済政策でも、民主党政権が一番気にする雇用問題。これに対処する根本的な施策は、産業・企業の活性化なのだが、民主党政権は失業者への補填といった方向にのみ動く。本当は、失業者保護をしつつ、その間に産業そのものの再活性化を図らねばならない。(私の意見の具体的な内容は2009年5月の規制緩和のブログご参照。)
私は、このところ一貫して民主党に投票している。別に民主党の方が自民党より優れているとは思わない。それは、日本が健全な二大政党制に進むためだ。また、日本の活性化のため、自民党時代とは異なる官僚との関係を構築してほしいとも思う。しかし、昨今の経済戦略論議を見ていると、民主党に票を入れた者としてはイライラが高まる。日本だけが、世界の中で沈没している現実から余りにも遊離しているからだ。 国民としては暫く様子見るしかないが。 Nat
追記: 以上のことを書いたら、民主党の代表選で菅と小沢が対決するというニュースが入ってきた。どちらの政策論が、私の思う対応に近いだろうか? 私の考えでの日本を救うための道は、2009年5月の規制緩和の9回連続記事で述べた通り、国内のサービス市場、特に医療、教育、また行政サービスという改革の進まない分野、あとは介護・福祉、そしてちょっと飛ぶが出版といった分野で、業態改革と規制緩和を組み合わせて進めること。もう一つは、2010年の1月の「日本って何だ?」で書いたとおり、メーカー型の日本企業の将来のために「国際的に異民族と一緒に仕事ができる人材を教育すること」である。前者のサービス市場の改革・規制緩和は菅も小沢もそれに関連する鋭い提案はない。ただ改革の抵抗勢力になるのは、利権擁護の既存業者と官僚だから、官僚への依存度を下げるという小沢の方がやや近いかも知れない。後者の国際人材教育だが、小沢の政策には教育が入るらしい。内容が違うかも知れぬが、国際人材も入る期待が少しある。といっても私には投票権はない。見守ろう。 Nat