今般、民主党政権が法人税の5%下げを言い出して、色々議論を呼んでいる。経団連の御手洗氏が前から主張している点だし、多くの論者も主張してきている点だ。一方、それに反論して特にネットでは、民主党が御手洗氏の欺瞞の乗せられているといった論調も多い。一体、どちらが正しいのか?
法人税に社会保険料負担を入れたら日本企業の負担は案外重くないという反論は、何年か前に共産党「赤旗」が言い出した。ネット上の論文でもそういう記事が多い。赤旗の引用していた数字は2004年度の統計で、日本の税と社会保険料の企業負担で見ると、対国内総生産(GDP)比で8.0%で、スウェーデンの14.6%、フランスの13.9%、ドイツの8.4%と比べ低い水準だというもの。しかし、このように「GDP比」で言われても、私には全くぴんと来ない。そもそもGDPにおける企業付加価値の割合が相当違うだろうから、上記の数字は殆ど意味がないのではないだろうか? 違いますか?
一方、経産省の今年6月の報告ではGDP比などではなく、ちゃんと企業の所得に対する負担率で見ている。それでは、法人税・固定資産税・その他の税負担プラス社会保険料の事業主負担も含めて算出していて、日本の50.4%に対し、 米国が42.8%、英国は41.6%、オランダが31%。(日本 の50.4%の内訳 は、税と社会保険料の事業主負担が合わせて31.8%で、地方 税は18.6%。)これだと確かに日本が一番高い。ところがこの経産省の数字には、昔の赤旗で引用していたスウェーデン、フランス、ドイツなどが入っていない。(意図的かしら?)。ということで、今ひとつすっきりとは分からない。しかし、多分、社会保険負担の特に重い北欧などと比べるのは、そもそも状況が違い過ぎて意味ないかも知れない。その辺が分からない。
もうひとつ良くある議論が、日本の大企業は海外事業で払った税額の日本における控除などで実効税率はもっと低いから、法人税下げるのは大企業を更に優遇するもので許せないという話しだ。日本の単体所得における日本法人税の比率で見ると、そうなんだろう。しかし、その企業の世界の連結所得に対して、海外で払った税金も総合すると、日本の大企業が結局楽しているのかそうでないか定かではない。
このように、そもそも経団連は大企業のための立論をするし、一方、ネット等でよくある反論意見は、そもそも「アンチ大企業」のものが多い。どちらも最初から自分のいいたい主張があって、自分の一方的な意見をサポートする数字しか挙げないような気がする。結局、本当はどうなんだということを、冷静に、客観的に誰か専門家が提示して欲しい。しかし、そういうものはなかなかない。金儲けか社会主義的イデオロギーに偏った論調が殆どのような気がする。私のようないっかいのビジネスマンからすると欲求不満になる。
日本経済は日本の中堅・中小企業によって支えられている。(それの証拠の統計は省略するが、そうなんです!) その中堅・中小企業にとって、日本国の法人税・社会保険料負担はやはり重い。中堅・中小企業は、だからといって海外に出て行くことも出来ず、法人税負担が海外企業との競争力の点で一つの大きなハンディになっていて、消えていくリスクを抱えていると思う。最初に欧米先進国の法人税・社会保険負担料合計の比較数字を書いたが、実は、日本の中堅・中小企業にとり、実際のライバルはアジアの企業、あるいは欧米企業のアジア法人でしょう。これらのライバルのアジア企業・法人の税負担はどうか?アジア諸国では社会保険料負担は軽いので法人税比較で十分だろう。アジアの法人税(国・地方計)負担率は、タイ、シンガポール、中国、韓国でどこも20-30%だ。そことの比較では、間違いなく日本企業(40%法人税)は重税負担のハンディがあると思う。
但し、日本の企業の元気のないのは、高い法人税が主因ではなかろう。日本人の村社会の悪い所と、日本のガラパゴス的な閉鎖文化的教育、つまりグローバルに通用しない人材しか育成しない教育の問題あたりに、より本質的な病根があるような気がする。とすると、法人税を下げるくらいでは、日本企業は活性化しそうもない。ああ困った。
Nat