前回、野田政権の「消費税で不退転の決意」というのは非常におかしいということを書いた。そう言っていたら、2012年度政府予算案が出てきて、私はいよいよ絶望してきた。
私が前回書いたとおり、財政のプライマリーバランス(PB)が20兆円規模で赤字になり、赤字国債がどんどん増える今こそ、却って、国を改革する機会であると主張した。つまり、増税の前に、歳出構造の合理化を直ぐ行い、更には国と地方の関係の改革を含めた国のあり方の改革の最後の機会と考えた。そしてその為に、私は、前の選挙で、頼りないが敢えて民主党に投票した。しかし、もうこれが全て絶望に終わりつつある。
2012年度予算案ほど人を絶望させるものはないだろう。なんと言っても野田政権の消費税10%への増税で税収の増加が期待できるということで、一気に歳出への歯止めがなくなり、唖然とするような国の出費が再開されたのである。凍結していたはずの新規新幹線3区域の着工(総工費3.0兆円)、例の八ッ場ダム工事再開(総工費0.5兆円)、環状道路(総工費1.3兆円)、以上の3つの総工費合計で4.8兆円というような、民主党が卒業したはずのコンクリート型の公共工事への税金の投入、そして、肝心の勤務医と開業医の収入バランスの是正でない悪しき単純医療費アップ。更にばらまき的な自動車関連減税という、歳出増大と同様の効果を持つもの等。それでいて、日本経済を少しでも成長に向ける戦略的投資は乏しい。野田「小役人」政権では、こんなことに終わると危惧したのが、まさにその通りとなってしまった。
このままでは、野田政権が重視したはずの「日本の財政PBの改善」は逆に悪化する可能性のほうが懸念される。よって、当然日本の財政の行き詰りが現実になる。しかしその前に、消費税アップで日本の経済は更に重病になり、失業・リストラ・賃下げが日本中をおおう。
来年には総選挙になるだろう。そして、当然、民主党は壊滅する。しかし、自民党も伸びない。そこで、日本は、イタリアのような少数政党が幾つか入り乱れる最悪の政治状態に突入する。その結果、今よりも更に、各論における個別勢力への迎合的な政治と、妥協・妥協・妥協の連続から、めりはりゼロの政索が今以上に恒常化する。そして、今以上に官僚が跋扈する。これは、もはや誰も制することの出来ない、日本国の悲しい運命である。
もはや、国には期待出来ない。それぞれの国民が自衛するしかない。そこで、起こるかもしれない悲しむべきことは、それが、「共生」、即ち周りの人と助け合う気持ちに水をかけ、個々人が自分だけの殻の中で自衛手段を備えるという、殺伐とした社会になっていくことだ。しかし、それが日々に現実になるように思えてくるから怖い。 Nat