前回、消費税を早晩上げるにしろ、野田民主党政権にそれをさせると、日本が滅びるやり方でしかしないから、野田の消費税増税には反対したいという意見を書いた。
また、前に日本の財政基礎収支の赤字20兆円は、税収が伸びない中で、高齢化のため年金・医療・介護の社会保障制度の費用が増える一方だからであり、赤字を消すためには増税のみならず、これら制度の抜本的合理化も必要と書いた。しかし、抜本的合理化のあるべき中身となると、専門家でない私には難しい。最も金額の大きい年金の国庫負担の合理化にしても、いわゆる「賦課方式」、即ち若い人が出す掛け金で老人に給付する現在の方式が根本的に破綻しているのは誰にでも分かるが、ではそれを、これから「積み立て方式」(自分で自分の分を出す)に変えるのがいいのか、民主党岡田の言う最低保障年金を税金で出すような税方式がいいのか等、専門家でないとなかなか分からない。
しかし、当ブログで問題提起してきている発想は、日本国民全体が貧民化してきている中で、子育て中の若い世帯の方が、そうでない世帯、特にリタイアした高齢者世帯で比較的余裕のある層と比べると、はるかに苦しいはずという前提に基づいている。平成10年と平成20年で世帯の平均所得の変化を調べると、全世帯では655万円が547万円と83%に減少しているのに対し、高齢者では335万円が297万円と89%に減っただけである。勿論、高齢者は比較的安定した年金収入に依存している一方、若い人の平均給与は減少の一途だからだ。どちらがどれくらいキツイかというのは定量化が難しかろうが、平成20年の児童のいる世帯の平均所得688万円というのは、父母と子どもの4人の生計費、子どもの教育・養育費、住宅ローン、将来への貯蓄ニーズを考えると、高齢者世帯の297万円よりキツイ場合が多いと言えないだろうか。いわゆる「ジニ係数」という貧富格差で見ると、やはり、若い人は大多数が一様にキツイ傾向にあるのに対し、高齢者では格差が大きく、楽な高齢者世帯が結構あるということだ。また、高齢者でも70歳代以上は貯金の取り崩しなしで回っているという。(注:1月30日加筆: 可処分所得で見ると、30歳代世帯は平均で年480万円、一方、60歳以上はその3分の2を占める働いていない層では192万円、働いている層では逆に平均837万円もある。働いてない高齢者層の192万円(2人)と30歳代の480万円(親子4人)で見ると、両方苦しいが、子ども2人に教育に年80万円(公立)~260万円(私立)掛かり、住宅ローンもあるかも知れないことを考えると、やはり30歳代の方がキツイと思われる。)
そこで、私の想う直感的な施策方向性だが、高齢者世帯で比較的余裕のある層には、今後もっと負担をしてもらう必要があるということだ。
1.第一に、年金は受給者になると(働いてないとして)年金の掛け金をもう払わなくてよくなる。年金受給者は3700万人。この人たちが月に1万円でも掛け金に貢献したら、それだけで全体で4.4兆円も財源が出来る。消費税は若い世帯により重い負担となる逆進性が問題になっているが、若い世帯の消費に重く課税するより、先ずは年金受給者自身がもう少し年金制度に貢献してもいいのではないか。
2.また、高齢者の医療費は若い世代より多い。ところが、医療費は原則として消費税無税である。高齢者の高額の医療費からは消費税が徴収されていないのだ。日本の医療費総額は37兆円、これに10%の消費税が掛かれば、3.7兆円の増収になる。(但し、健保への負担が増えるといけないので、自己負担の部分だけに掛かるようにすると、1.1兆円程度に減るが。)・・・こういうことを言い過ぎると、年寄りイジメみたいになるが、前に当ブログで書いたとおり、高齢者の医療、特に病院医療(高費用の西洋医学)への過度依存を改善するといった、医療の中身の改善とパッケージで考えることで、より合理性があろう。
3.あと、高齢者は資産も持っている。貯金では平均で2700万円くらい、宅地で平均6000万円とかだ。宅地の固定資産税を現在の1.4%から0.5%上げると、一人平均年間30万円、高齢者の世帯数1000万を掛けると3兆円だ。また貯金への税金はどうだろう? もし2700万円の貯金に年に1%の税金を賦課したら、年に27万円で1000万世帯で2.7兆円になる。
4.その他に、70歳以上の高齢者の健康保険自己負担率の1割は、2013年から2割に上がるが、これで1.8兆円、健保財政赤字が縮小される。
このように、高齢者の負担をそれなりに改善することは、貧困な高齢者世帯への配慮を忘れずに制度設計する場合、よりキツイと思われる若い子育て世帯とのバランス上、やむないことではないだろうか。上記1~3で計算した改善金額の総額は13.8 兆円。偶々だが、野田政権が今ゴリ押ししようとしている5%分の消費税増税の予想増収額13兆円と同じ数字になる。他にも国と地方の重複行政といった、野田のやらない大きな構造改革テーマもある。
このように改革テーマを後回しにし、党のマニフェストの不履行を誤魔化す為に消費税増税先行に突っ走る野田政権にはストップを掛けないといけない。 Nat