間もなく福島原発事故から満2年になる。福島原発のプール中の使用済み核燃はいまだにむき出しのままだし、今でも少しづつ放射性物質が放出されていて気持ち悪い。しかし、それよりも、事故直後の爆発で福島県及び近隣7県の広域に撒き散らされた膨大な放射性物質の除染が出来ない問題が深刻になりつつあると懸念する。
インターネットで分かる範囲で見てみると、福島市では、2013年2月1日で、住宅地域の除染はまだ24%しか済んでいない。また、近隣7県(岩手・宮城・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉)全体の除染に関する環境庁の情報では、除染の完了度合いは、学校・保育園で6割、住宅で2割、道路は6割、農地・牧草で3割、森林は未だほぼゼロ、とある。
しかも「除染完了」といっても、先ずは空間線量を20mSv/年以下に下げるための「応急手当」だ。要するに、先ずは放射性物質が集中して高濃度の土壌から選択的に除去しようということだ。しかしそれだけでも、気の遠くなるような作業なので、上記のとおり2年で2-3割くらいしか済んでないという話だ。いわゆる「年間被ばく限度」として有名になった「1mSv/年」以下にするのは「長期的課題」とされている。「長期的」とはどれくらい長期か? セシウム137の半減期は30年だが、30年掛かって「1mSv/年」以下にしても遅い。
更に、20mSv/年以下とか1mSv/年以下とかいうのは、いわゆる「外部被ばく」、即ち、レントゲンとかと同様の外からの被ばくの基準に過ぎない。特に大量の「死の灰」が降り注いだ福島県においても応急手当ての除染がまだ2-3割とすると、当該地区住民が今も毎日吸い込んだり、毎日口から摂取してしまっている「死の灰」(放射性物質)による、内部被曝の問題は、実質放置されているに近いのではないか。
チェルノブイリでは、20年経った今も、周辺20~200KMの広域が、永遠の立ち入り禁止区域だ。元々、人口が過疎であったから出来た。福島なり近隣の県では、遥かに多くの住民が住んでいるので、広域を永遠の立ち入り禁止区域にしづらい。しかし、本来、相当の区域がチェルノブイリ同様の永遠の立ち入り禁止区域になるべき程、大量の死の灰が放出されたのではないのか? 2年経った今も、高濃度土壌の応急手当の除染ですら2-3割しか進んでないとすると、政府はそろそろ、もっと広域について、永遠の立ち入り禁止宣言をして、国民の内部被ばくを抑制すべきではないのか?
内部被ばくのリスクは、一般論としては、福島からの距離の2乗から3乗に反比例する。即ち、東京・横浜のように300Km以遠となると、福島県とは事情が多いに異なるので、これで、不必要な懸念を持つのも禁物だ。しかし少なくとも、福島県、あるいは直接的近隣の住民の内部被ばくリスクについて、我々も政府も、次第に忘れつつあるのではないかと懸念する。そういう意味で、「福島」は全然終わっていない。いや、一部の地域かも知れないが、その影響問題は、むしろこれからかも知れない。強い懸念を禁じ得ない。 Nat
●2013年3月1日追記: その後、更に調べてみたところ、土壌等に染みついたセシウム137は、時間と共に土壌に固定化し、住民が舞い上がって吸い込む度合は相当低くなってきているようだ。もし、それが本当にそうなら、引き続き、地域の自家栽培の野菜やキノコなどを食べない限り、除染が進んでいない地域でも、大きな心配まではしないでいいのかも知れない。しかし、政府などの発表では安全サイドに偏らないかという不安が付きまとうので、今後とも国民は自分で良く調べたり、考えたりし続ける必要があろう。一方、福島原発の至近距離の避難地域については、そろそろ実質永遠に解除できないかどうかを明確にするべき時期に来ているのではないだろうか。 Nat