安倍・黒田の「2%インフレ」目標には多くの人がピンと来ていない。
理由は、そもそもデフレ(CPIがマイナス)の本質が何かということの理解のズレだろう。黒田・岩田らの言うように「デフレが、貨幣価値の上昇の為、全ての物価が下落してきている貨幣的現象」なら、世の中に流通する貨幣(マネー)の量を増やして是正することにも意味あり得る。しかし、多くの人はデフレの本質を貨幣的現象と見ておらず、モノを作れど市場では安くしか買ってもらえない、それだけ需要が弱く、中国などの安値との競争でも負けている(一方で技術革新によるコストダウンもあるが)だけと思っている。
以下の物価のグラフ見るとそれが正しいことが一発で分かる。左端は2006年、右端は2012年。下の大きくマイナスの濃紺グラフが耐久消費財(TVや車)、黄緑色が半耐久消費財(洋服等)で、これらの物価が、弱い需要、中国との競争で大きく下がっている。一方、必需品の多い食品等非耐久(水色)とサービス(赤)は最近若干プラス。要するに、物価の平均値が少しづつ下がり続けてきた主因は、TV等家電製品を中心とする「耐久消費財」分野での価格破壊であることが、このグラフで分かるだろう。これだけでも、デフレは全ての物価が一律に下がる貨幣的現象ではないことが明白である筈だ。ということで、黒田金融緩和は円安とバブルしか生まない。これまでの暗い暗い経済状況のままよりはマッシかも知れんが。 Nat
● 4月12日追記: 黒田金融緩和を支える岩田氏ら学者の前提は:①デフレは貨幣的現象(貨幣供給が十分でなく貨幣価値が上がって物価が一律下がる)である。②そういうデフレは経済行動を歪め景気を悪くする。③よって貨幣供給を大幅増やし物価を一律上げて良いサイクルに戻す。ということだろう。
しかし、日本の物価平均値の下落傾向は、上記の通り、もっぱら家電等の耐久消費財や服等の半耐久消費財が低需要、中国、技術革新で価格破壊されてきているのが原因である。となると、貨幣を増やすのは的外れである。しかし、上記の通り、少なくともそれにより円安に是正される効果はある。安倍政権・黒田日銀も、半分くらい本音では円安効果を主に考えているのだが、国際的にそうは言えないからそう言ってないだけかも知れない。
私も円安で特に輸出に繋がりのある企業の採算性が大きく改善するのは経済にプラスと考えている。しかし、黒田日銀が目指しているのは、一義的には「経済の改善」ではなく、インフレ2%だ。円安で原燃料など輸入物資の円でのコストが上がるから、それによるCPIの押し上げ効果はあり、それでインフレ2%に近づくかも知れない。しかし、それは「悪いインフレ」である。原燃料のコストが上がり、それを市場に転嫁出来ない現実がある限り、輸入インフレの結果、国内の企業採算は悪化、それは、いわゆるGDPデフレーター(国内の経済行動が生む利益幅の上下動き)をマイナスの方に作用する力となる。そのマイナスの力と、輸出の方の円安のプラスの力との勝負になる。100円くらいまでならプラスがまだ強いという説もあるが、分からない。
ということで、結論としては、(1)黒田金融緩和の貨幣的デフレ撲滅は的外れ、(2)円安効果は輸入インフレという悪しきインフレのマイナス面もある、(3)結局、残るは、株などのバブルでの心理煽り立てで、景気が少し上向くかもしれない効果のみとなる。 Nat
2013年04月
私がジャズ・ピアノをやっているというと、良く「絶対音感あるんですか?」と聞かれる。私には絶対音感は全くない。しかし、何故、そういうことを聞くのだろう?「音楽やる人」=「特殊な音の能力がある人」=「絶対音感のある人」という論理なんだろうが、実際には絶対音感と音楽の才能とは関係ないと言われている。それは、「視力の優れていることと、絵が上手なこととは別」というのと同じと良く言われる。
そもそも絶対音感とは何か? 楽器の音でも、パトカーのサイレンの音でもいいが、音を聞いて、「あの音はファの#」とかいう風に音の名を言い当てる能力のようだ。音の高さを当てるというより、音と、音の言葉での名前(「ド」とか「レ」)が頭の中で結びつくものらしい。脳の仕組みで言うと、左側の言語野で音を受け、言語の「ド」「レ」と対応させるようだ。面白いのは、絶対音感者でも歌の場合は絶対音感が働かない人が多いらしい。歌の歌詞の理解が言語野で優先するからだそうだ。絶対音感が邪魔になることもあると言う。BGMを聞いていても、頭の中に音名が歌詞のように羅列されて浮かんできて気がおかしくなるとか、チューニングが全体的に上か下に半音くらいずれているギターで弾く音楽は気持ち悪いとか、ある曲をあるキー、例えばCメージャーとかで覚えると、例えば半音上げてDbメージャーにした時にCの時の音の名前とDbの時の音の名前が全然変わるので対応が難しいなど。
一方、相対音感というのは、「キー」になる基準の音(CならC)が決まると、その音楽に出て来る他の音とキーのC音との相対的な距離感がきっちり感じられるという能力だ。キー音をDbに半音上げても、全体が平行移動するだけという感覚だ。私は知っている曲なら、ピアノで、お好みのキー(基準音)を言ってくれれば、たいがいそのキーで弾けるが、これこそ、お蔭さまで相対音感に恵まれているからだろう。だから、ジャズ・ピアノやっていると言うと、「相対音感が発達してるのですか?」と聞いてくれたほうが、私としては分かり易い。
さて、では、相対音感の場合、脳のどこが対応しているのだろう。音そのものに対する感覚的な反応は主に「感覚脳」とも言われる右脳がつかさどる。しかし、それは「音」という物理的刺激とか音色とかのことだ。どうも、「音楽」は左脳で受けているとも言われる。つまり、言葉と同様に、音を「意味」として受け止めるのは、やはり左脳ということみたいだ。ちょっと話がそれるが、日本人は、自然の中の音、川のせせらぎとか虫の音を左脳で言葉的に聞いているが、西洋人は物理的音として右脳で聞いていると言う。だから日本人は、自然の音にも情緒を感じる度合が高いとも言う。
ということで、私の左脳には、相対音感、つまり音の相対関係を認識する部分があるのだろうが、絶対的に音と高さ(音名)を結びつける部分はない。ところが、面白いのは、ある音程で歌でも歌っているとして、5分くらい後に、もう一回、その歌の高さを思いだせと言うと、それは出来るのだ。しかし、3時間もすると、もう記憶は消えてしまっていて、再現出来ない。とすると、脳のどこかに、絶対音程を短時間は覚えていられる部分があるということだ。つまり、ある曲を弾くなり歌うなりしている時、ある脳の部分が、歌っている間くらいは、しっかりキーの音程を保持していて、相対音感がそのキーを土台にして脳の中に構築されているということだろう。そうでないと、伴奏がない場合、歌っている間に微妙にずれていってしまったりするということだろう。
というようなことを色々書いてきたが、結局、音楽に対する脳の仕組みの解明は余り進んでいないようだ。C音・G音は5度の違い、即ち、周波数が2対3。 D音とA音も5度の違いで周波数が2対3。相対音感の我々の脳の中で、周波数が2対3のこれら二つの音の組み合わせを、どれも「5度音程」として同類に感じる脳の仕組みは何か? これが全く分かっていない。非常に不思議な人間の能力だ。絶対音感も不思議だが、相対音感だけでも十分不思議だというお話しでした。 Nat
北朝鮮が核兵器用プルトニウムの製造再開(方法は原発再稼働)で、いよいよ戦争モードだ。思うに、北朝鮮が核兵器を始めてしまったからには、論理的にはアジア中の国が同じく核兵器を持たざるを得なくなった。核兵器使用への牽制は唯一他の国も核兵器を持つことしかないからだ。しかも、北朝鮮レベルでも核兵器を持てるくらいだから、時間はかかろうが、技術的には他の国でも持てなくない。そうなると、アジア中、世界中に核兵器がはびこる。だから、人類としては、核兵器を元々の各保有5大国に限り、5大国も核は漸次縮小という路線だったのを、まずインドとパキスタンが持ってしまった。それでもこれまでは辛うじて均衡が保たれていたのに、北朝鮮が核保有して均衡を崩した。一旦、均衡が崩れると、全員が核兵器持つまでは均衡しない。ゲーム理論のいわゆるPrisoners’ dilemma問題だ。分かりやすい例で言うと、サッカーなど競技場で、前の方の観客の誰かが立つと後ろの人は見えなくなるので立つしかなく、そのうち全員が立つしかなくなる。問題解決には、皆で一斉に座るしかなくなる。これと同じ問題。えらいことになってしまった。
一方、北朝鮮は制裁・圧力・対話のどれでも絶対核兵器を捨てない。米国が北の体制承認と不可侵で先に譲歩して初めて捨てる可能性が出るが、米国がそれを先にすることは絶対ない。よって北が核兵器を自発的に捨てることは100%ない。そうなると、論理的帰結は北の核施設を米国がピンポイント爆撃で破壊することだろう。北がどこまで何をやれば米国が爆撃するかだけが未定で、爆撃に至るのはほゞ必至だろう。その結果、北は、米国本土への反撃は絶対やらないだろうから、代わりに韓国か日本の米軍施設近くに反撃するのも必至だろう。その次に何処までエスカレートするかは誰にも分からないが、非常に残念ながら、2013年中に爆撃の応酬が発生する確率は非常に高いと思う。日本人の我々は平和の為、何が出来るのであろうか。 Nat