参議院選挙の原発に関する各党政策では、自民党だけが再稼働派で、他は原発ゼロを目指す。私自身は前から「原発の安易な再稼働は絶対反対、しかし、原発ゼロではなく、原発は“やり直し”だ」と言っているので、自民党の政策も他党の原発ゼロ政策も、どちらも問題と思っている。
先ず自民党の再稼働だが、規制委員会の新基準は飽く迄も“当座”のものだ。取り敢えず、津波への壁とか非常電源とか原子炉周辺の対症療法の基準を決めたが、炉心の根本改善と、事故時の人的対応の不備の改革は先送りだ。炉心はBWRのベント導入を例として挙げているが、電力なしで自律的に冷却される仕組み等が既に世にあるのを取り入れることは言ってないし、水素爆発の根本的対策等もまだだ。また、事故時の人的対応の不備は、規制委員会では原発のハードの規制が中心ということで、実質放棄しているとも思える。福島の事故後の対応の反省に基づいた各電力の人的対応が大幅に改革されたという話は聞かない。そこで、安全基準は、継続的に見直しさせていくことが必要なのだが、自民党ではそうなるまい。
一方の他党は情緒的に「もう原発はイヤ」の与論への迎合で「原発ゼロ等」と言っているが、本気でその場合の諸施策を考えたふしはない。まず:
1.使用中の核燃料という超危険物質(今はプールで冷却して使用再開に備えている)の処理という難題に目をそむけている。
2.原発ゼロの場合のエネルギー政策が皆無である。元々世界一高い電力コストが更に大きく高くなるのと、温暖ガス規制も考えると拷問並みの省エネ義務が国民を襲う。
3.今後、隣国中国では原発が乱開発されるが、日本では原発技術者が廃業だから、中国の事故防止に日本として実質的に技術貢献することを放棄することになる。だから、中国の原発が爆発して放射能物質が大量に日本に流れて来るリスクへの対応を放棄することにもなる。
ということで、再稼働も、原発ゼロも、両方ダメだが、これは所詮長い戦いだから、今回の選挙としては論点ではあるまい。経済再生こそが主論点だろう。 Nat