女性の登用の掛け声。それはいいんだが、素朴な疑問もある。(1)まず企業の役員・幹部に女性も適材が差別なく登用されるようにというが、そもそも従来の男性中心の幹部選任が、果たして主に「適材登用」原理で行われてきたのか? 

 日本では役員・幹部に経営リーダーシップを求めるよりも、選任人事が組織全体の安定性を高めることを主眼に行われるのであって、必ずしも能力による適材優先ではない。とすると、そういう中で女性登用は企業にとり如何なる意味を持つのか?そこの根本議論を聞かない。

(2)あと、逆の話だが、受付に座っている社員は日本では殆ど女性だ。訪問するお客には女性もいるのだから、イケメン男子社員をも配置しようという議論は聞かない。斯く斯様に、女性登用一つとっても、根本議論を聞かない。根本議論やると収拾つかないんだろうが、そこを避けて、変な目標やインセンティブばかり議論される。おかしい。

 

 更にだ、女性の登用が安倍政権の成長戦略の一環というのが、いまひとつ私には分からない。

前から男女雇用機会均等法があって、女性で働きたい人が差別を受けずに・・というのは良く分かるが、最近、突然成長戦略にもなった。日本の労働人口が不足し成長を阻害しないよう、女性を活用しようと言うことのようだ。

 有名なM字カーブ問題。つまり、若い頃就労していた女性(20才台の就労率は75%)の多くが出産・育児で退社する30-40才の就労率は65%に下がる。育児が終わった4550才では就労率が75%に戻る。この65%に下がる30-40才の女性を活用しよう、その為に育児は男性にも負担させようという話。これは男女平等の趣旨からは分かる。しかし成長戦略にはならない。日本全体では、「仕事の労働需要」+「育児の労働需要」の合計は一定、また3040才代の男・女の労働供給力の人数合計も一定だから、育児を部分的に女から男にシフトしても、その分、男の「仕事の労働力」供給が減るだけで、全体の労働力は増えない。(職場で遊んでいる男が多いなら別だが。)言い換えると、これまで女性が育児で頑張ってくれていた分、男性の就労者は朝から晩まで集中して働くことが出来、それが日本経済を支えてきた面もある。その一角に女性が参画できる場合は、男女平等からは結構なことだ。しかし、その分イクメンになった男性の仕事の労働力は減る。だからM字カーブ緩和は男女平等には資するが、日本の成長戦略に資するというのは、安倍政権の政治的まやかしだろう。    Nat