軍事アナリストの小川和久氏が以下のように書いている:
『日本国憲法は日米安保条約と国連憲章のどの条文も否定していない。違憲なら条約締結も国連加盟もない。ゆえに自衛権は個別的、集団的ともに違憲ではない。そのもとで日本政府は集団的自衛権を「権利はあれども行使せず」と政策判断。それを今回は限定的行使容認とした。これも政策判断。』
小川氏には悪いが、随分乱暴な議論である。謝った認識が拡がらないよう、私の見解を書いて置く。
(1)日米安保条約はその前文で両国が国連憲章の謳う集団的自衛権を認識してはいるが、個別の条項では「憲法上の規定に従うことを条件とし」としており、憲法が優先するという極く当然の構造になっている。よって、「日米安保条約を締結したからには、集団的自衛権は違憲ではない」にはならない。
(2)憲法の制定された1947年の後の1956年に、日本は国連に加盟、国連憲章(集団的自衛権を認めている)にも連なったが、ここでも国際法上の条約等より自国の憲法が優先するのが通常ゆえ、国連加盟で集団的自衛権が違憲でなくなった訳ではない。
【結論】
・日米安保条約や国連加盟が、集団的自衛権の違憲性を否定するというのは間違い。
・政府の政策判断で「国際情勢の変化で、集団的自衛権も極く限定的には憲法解釈の範囲になってきた」としたのが今回の自公政権の主張であるというのはその通り。しかし、私はその政府の主張に異議を唱える。今の情勢でも、集団的自衛権は、憲法9条の武力行使を永遠に放棄した基本的理念から逸脱するものであると考える。 Nat