● ポップスで、途中、サビなどで転調する場合、たいがい「短3度上」転調だ。例としては、サザンの「津波」で、サビの最初の部分「人は誰も愛求めて」の部分がそれ。コードで書くと、それまでDキーの普通の三和音であったがのが、サビの頭から「Gm7/ C7| F 」と、FキーというDからすると短三度上に転調する。
● しかし、短三度上転調は、いわば「同種調」への転調で、自然である一方、転調のドラマティックさは乏しい。ポップスでは、ジャズほどの ドラマティックナコード展開を好まないからである。(注:なぜ同種調かはこの記事の一番下に注記。)
● 一方ジャズ系、あるいはスタンダード名曲系で、古来良く使われる転調は「長三度下」だろう。有名な、Smoke gets in your eyes (煙が目に染みる)をプラターズのキーDで書くと、Dの普通の三和音中心のコードで一通り歌った後、サビの直前で、突然、サザンの「津波」と同様、単三度上のF7を経由するが、F7は「経由」であって、その後、サビ頭からはBbキーという「長3度下」に転調される。もう完全に「あさって」とか「別世界」とか「天国」とかに移ったという、ドラマティックでロマンチックな展開になっている。他の曲の例で言うと、Billy Holidayなどの歌った「Easy Living」でも、サビは長三度転調、劇的・ロマンチック系転調だ。(キーはEb、サビはBになる。)
● 先日、私が教会のイベント用に創った賛歌でも、もちろん、サビは「長3度下」転調、しかも、そこから更にサザンの「津波」同様になるが、ポップスの好きな「短三度上」転調を経て元に戻るという「二段階転調」をやった。もう、私の好きな、劇的・ロマンチックの骨頂を狙った。(聞いて頂ける人は、ここをクリックした中の、Yes Jesus, It's youがそれ。)
● 斯く斯様に、私は劇的・ロマンチック転調、専ら「長三度下」が大好きなのだ。ポップスの転調では物足りない。 Nat
(注:短三度上は、Dキーで言うと、Fキーだが、FキーのマイナーコードはDmでDが共通。また、DキーのサブドミナントはGだが、その変形がGm7であり、そのまま津波のようにGm7/C7でFにたどり着くのは、主要三和音の親戚に行っているようなものなのだ。この点、長三度下は「違う世界」への移行なのだ。)