★例のModern Monetary Theory (MMT;インフレ発生を監視しながらやる限り、財政ファイナンス(要はお札の印刷)は問題にならない説)について、朝日新聞が、①MMTを唱えている学者がきちんとした学説を整理・提示してない、②高名な経済学者は皆、それを批判している、、として「MMTは邪悪な説」的に評論して書いている。それなら、朝日新聞自身が、なぜMMTは邪悪なのかを理路整然と述べるべきであろう。
● 私はMMTを、きちんと学説的にも数学的にも整理しようと思えば出来るはずと考える。
(1)日本みたいにインフレほぼゼロ状態で、MMTをやっても、インフレが発生しない理由:
①仮に政府が毎年同額の国債を新たに追加発行し日銀が引き受けると、日本の国債残高と日銀の国債保有残高はどんどん膨張する。しかし、政府の調達するその年度の物品・サービスの量は前年と同じだから、物品・サービスの需給は全く変わらない。よってインフレは起こらない。
②もし、政府の新規国債の額を毎年前年比で少しづつ増やす場合、その増加の度合いが、物品・サービス供給者として事前に十分察知できるように情報提供され、増加量が供給capa拡大に見合う程度である限り、需給バランスは保たれ、インフレは起きない。
(2)高名な経済学者先生の多くは、インフレを「貨幣的現象」と説明してきた。実際、かなりのインフレが発生してしまっている経済では、物品・サービスの供給者が、対価を受け取る時までの時差の間に発生するインフレを価格に織り込み始めるので、インフレのスパイラルが起こり得る。これは需給ではなく貨幣的現象。・・・しかし、これはかなりのインフレが発生してしまったら、スパイラルを抑制しにくくなるというだけの話だ。貨幣的事由によるインフレの「悪化」はあっても「発生」はない。「発生」はひとえに需給バランスだけが事由たり得るのだ。
(3)とすると、MMTが想定している如く、現在の先進国のようにゼロに近いインフレ国でMMTをやっても、インフレ率を慎重にモニターしつつ行う限り、その国政府の中銀からの借金がどんどん増えることはあっても、ハイパーインフレにはならないのである。これは数学モデル等なくても分かる話だが、やってほしいなら数学モデルでも立証できることだ。(なお、国の政府の中銀からの借金が膨らむのが気になる場合は、国債を永久債にすればいい。あるいは政府と中銀を連結ベースで見れば国家としての借金は相殺される。)
● MMTを「批判」している高名な経済学者も、経済理論として論破している向きはいない。ただただ、現実の政治では、一旦、政府にMMT施策を正々堂々と認めてしまうと、政府は必ず、その麻薬に溺れ、MMTが想定している「インフレをモニターし制御する限りにおいて」という条件が簡単に崩されてしまうことを知っているからだ。つまり経済学説論争しているのではなく、「人間の弱い性(さが)」を議論しているのだ。
・・・朝日新聞は、そういう理解をし直して、記事を書き直してほしい。 Nat