★★ 東北電力の女川原発二号機の再稼働に向けて、原子力規制委員会が審査書案なる書類を了承、新安全基準に合格しているとのお墨付きを実質出した。
● しかし私には以下に書く、根本的な疑問があるので、規制委員会のHPを見たが、審査書案の要点などの開示がない。そこで、飽くまでも、私の想定に基づくコメントになるが:
(1)東電福島原発事故以前の原発行政は、周知の通り「原発は二重・三重の防御機構に守られ ”絶対安全”」との神話に基づいていた。それが福島で崩れた。そこで、福島事故がもたらしたレジーム・チェンジは以下の2点だともいえよう:
①従来の安全基準は甘かった ⇒ 厳しく修正した新基準を作ろう
②「絶対的安全」はあり得ず「相対的安全」との「判断」の問題になる。規制委員会は、原発が新基準を十分クリアしているかの検証はするが「安全宣言」はしない。安全判断は、当該電力会社と地元自治体が行う。(注:この点で、規制委員会も中央政府も、直接責任を負わない体制であると了解する。これは原発が民営である日本の体制の根本問題である。)
(2)今回の女川原発でも、規制委員会が間もなく出す決定は、上記(1)①の、新基準に合致しているかどうかだけになる。大問題は、②の「相対的に安全度が高いから再稼働させよう」との判断を負ってしまう地元自治体が、何を材料にどう判断するかだ。
● 私は、福島の教訓で「絶対的安全はない」になったからには、当該電力及び規制委員会が解析し判断し、かつ開示すべき最も重要な情報は、新基準クリアでも尚残るリスク論であると思う。
・今回の女川の東北電力の適合性審査請求の中身の情報はチラッとしか見れてないが、基準最大規模の津波や地震との関係で専ら述べていることは、基準が引き上げられたので、その規模の津波や地震が原発地域で実際に発生する確率は「ほぼゼロ」である、といった点であるように見える。
・「ほぼゼロ確率」にも拘わらず、万一発生してしまった場合は、如何なる支障・事故が発生し得るか、そしてそれに対する「万一の備え」としてはXXXがある、住民の避難策はXXX、といったように「事故・支障は万一の場合は起こり得る」という前提での確率論と、万一の対策議論を、地方自治体にも分かりやすく整理し開示すること・・・これこそが、福島以降のレジームであるべき、それこそが「原発出直し」の基本である、と思っていた。
● しかし、どうも、結局は、電力会社、規制委員会とも、要は、基準を従来より高めに設定し、基準以内の津波・地震等への対策は追加工事するが、基本的には、昔と同じ「事故は起こらないようにしました」という基本発想は全く変わっていないのではないか、と強く懸念する。「確率は低くても、事故は起こる」への転換、それでも、原発を稼働するメリットが勝るか? このリスク・リターンのTrade-offを明確に関係者が皆理解し共有し、皆で意を決して再稼働するのでないとおかしい。と私は思うが、恐らく、そんなやり方では日本人は結局「No」になってしまう、だから、基準だけ高めにして、結局「原発はこれで安全になった」神話を続けるだけではないのか? と懸念する次第だ。
Nat