★さきほど、1月の菅首相演説で日本のイノベ―ションがダメな理由で、特に大企業の「無難経営」の弊害のことを書いた。
・・・それで、その話につき、ここで一言補足する。
・・・米国のような国家が防衛・宇宙などで膨大なR&Dする国と日本は違うので、菅演説のように突然「大学ファンド」なんか始めても、日本のイノベは起こるまい。
・・・日本では、やはり先ず企業が変わらないといけないが、日本企業でイノベが起こらない理由は、例えば以下のNTTデータの研究所のチャートなど色々な整理がある。
● 私は、その中でも特に皆が就職したがる大企業の体質に根本問題があると感じている。しかも、それは「適正ガバナンス運動」のため悪化していると思う。
1)内弁慶・減点主義の企業文化:
そもそも、ある企業に学卒で就職し、終身雇用・年功序列で、役員などにまで昇進することを目指す、従来の日本の大企業組織では、全くの内弁慶文化、”事なかれ”「減点回避主義」(特に何もせずケガのないのが一番出世できる)で、イノベが追及されるわけがない。そうでない、外に向けてオープン型、能力主義、成果主義で報酬も大きく違うような新しいタイプの企業が、株式市場・人材市場で高い評価を受ける、そういう方向に関連の諸施策を誘導する必要がある。
2)過度のガバナンス制度は、企業のチャレンジもイノベも殺してしまう:
・テスラのイーロン・マスク氏が次々に革新を打ち出し、宇宙ロケットのSpace-X社までモノにしてしまうのは、彼の非凡な商才もあるが、独善的・超強引なワンマン経営スタイルの良さが出ている結果である。ただ、テスラのような上場会社で、それやり過ぎると問題なので、株主ガバナンス上、色々行き過ぎについてはオトガメを受けている。しかし、オトガメされる位、強烈経営ということだ。
・一方、東芝はどうだろう。銀行出の車谷社長が、どう見ても自己保身のためCVCファンドによるTOBを仕掛けた策謀からは、一旦、元に戻ったようだ。しかし、東芝が、モノ言う株主の圧力を受けつつ、上場を維持して、今後「人事委員会」による客観プロセスでのトップ選任などを徹底すればするほど、テスラのマスク氏型の突出的な経営は封じられ、コンプラだけは完璧、しかし突出感の全くない「ただただ無難なだけの経営」になっていくだろう。
・・・そういう意味では、保身のTOBは論外だが、意欲的・戦略的なPE資本の元で、非上場化し、思い切ったイノベ経営に転ずるのも多いにあっていい。これから上場企業はいよいよ金縛りになっていくことが多い。PE傘下で、いわば「オーナー企業の経営」類似の、果敢な経営を目指すというパターンは、日本でももっとあっていい筈だ。日本中がお行儀だけはサイコーの上場企業になっては、日本のイノベは愈々終わりである。
・・・菅首相にはそういことは全く分からないだろうが、心ある経産省役人には、日本の企業形態が上記のような観点から大幅に進化することをアシストする法制・税制上の新施策を提案してほしい。 でも、無理かな? Nat