★先日、経済評論家の三橋貴明氏がTikTokで演説しているのがあって、私はここFBでコメントを求められた。三橋氏の言っていることは「世界各国の中で、政府の国債は何時か返済しないといけないという考え方で国債の運営をしているのは日本だけ。日本政府だけは国債は将来の世代の税金で返済する必要ありなどとトンでもないことを言う」という内容。
・・・これは全く正しいのだが、これを三橋氏のように風貌的に、申し訳ないが「インチキ」ぽく見える人が言っても国民は信用しない。かと言って、全く同じことを、元財務省で、今は財務省をバカにしきっている高橋洋一教授も言っているのだが、それも人をバカにし過ぎなので、なかなか信用されない。
【1】国債は適正規模範囲では、ずっとそのまま返さないのが適当。
(1) 企業に譬えるとトヨタ自動車。27兆円の借入金を抱えている。しかし、それを返そうという雰囲気もないし、貸している銀行も返せという雰囲気は全くない。トヨタは自己資本27兆円、売上36兆円。ならば27兆円の借金は全く適正な規模で、これを変に返済しようとして成長投資を控えるよりも、会社の利益・自己資本の成長に合わせて、更に借入金を増やして果敢な成長戦略を追求するのが正解だからだ。
(2) 国も同様だ。適正規模の国債残高までは、何も変に返済・償還しようなどとはせず、既存の国債は抱えたまま、返済時期が来た国債は、新しい国債を発行して借り換えして回していけばいいだけだ。変に返済しようとして、その分の返済資金を増税で調達すると、一発で景気悪化するだけだ。バカバカしい。
(3) ところが、世界各国の中で、国債の永遠の借り換えによる永遠の保持を「悪」として、「国債は何時か絶対返済するもの」という思想で変な法律を制定している国がある。我が日本だ。全ての国債は、部分的に借り換えしていくのはいいが、最長60年ではフルに償還し切るべしという法律がある。・・・しかしだね、もう日本では、実際には、国債の償還をするための資金が不足すると、別途、一般会計の赤字を埋める赤字国債を発行しているから、60年期限を遥かに越えて国債を抱えてはいる実態はある。しかしとにかく、日本の財務省だけは、世界でも異様な思想:「国債(国の借金)は少なければ少ない方がいい。何時も返済・償還して減らすのが正しい。」ということでやっており、国民にも「日本の国債は危険信号。返済は将来世代へのツケ回しになる。」という洗脳教育をやってきたのだ。
(4) しかし世界の常識では、国債は残高が本当に「危険水準」にならない限り、永遠にキープしているのが国のためになる。誰もトヨタに借金返せ!と言わないの同じだ。
【2】では、日本の適正国債発行限度はどれくらいか?
(1) 財務省はこの問いに絶対答えない。いつも国債は減らし、その分、増税しようという頭しかないのが財務官僚だから。言うのは「今の、国債残高1000兆円は、GDPの2倍近くあり、先進国の中でも危険レベルだ。財政改善しないと日本はアブナイ。」ということだけだ。・・・GDPの2倍がどう危険なのかは、一切言わない。
(2) そこで、プロの財務省にイジワルされた国民としては、日本の危険にならない国債最大規模という議論を、自分でやるしかない。・・・そこで、私がいつものザックリの暗算議論をしてみよう。
① 国債を支える国内の金融資産:
・世界各国で国債を国民の金融資産だけで支えている国は、貯金の好きな日本と中国だけだ。米国などは、世界から借りまくっている。日本は、国内では資金が余って米国の国債を買ってあげている位の「金融資産余剰国」である。
・日本人はもともと貯金指向だが、いまや家計(国民)の金融資産は2000兆円を超えた。しかも添付のグラフの通り増加の一途である。これの多くは高齢者のものだが、将来の年金給付不安があると高齢者も余計に貯金するし、若い世代も将来不安があるから必死に貯金する。だから、貯預金などの金融資産は増える一途だ。
・一方、家計の借入金は350兆円。予測では、微増していくという。つまり、家計の純ベースでの金融資産は1650兆円ということになる。
・一方、企業の純・金融資産は300兆円余だから、家計と企業を合わせて純・金融資産は2000兆円くらいということになる。
・日本政府の国債1000兆円だが、国債でない政府借入れが200兆円あるので、総計1200兆円。あと地方政府が400兆円の地方債を持っている。国・地方政府の借入金計1600兆円。
⇒ これを日銀が500兆円、政府の国債を保有しているおり、日銀は国の「子会社」と見做すと、国・地方政府が日銀以外つまり家計と企業の金融資産2000兆円から借りているお金は、1100兆円ということになる。国民・企業の金融資産の余裕はあと900兆円ある。・・・この余裕部分が、日本国内では国債以外のものに投じられていると同時に、米国の国債150兆円など外国資産の形にもなっている。
② つまり、上記の暗算だけから言っても、今の日本政府の国債残高1000兆円を、財務省は危険というが、それは全部、国内で消化されており、国民・企業の貯預金が回り回ってそれを支えているのだし、その国民・企業の貯預金などの「余裕」分はまだ900兆円もある。つまり、暗算的には、国債は今後、計1900兆円まで積み上がっても、何ら問題ないことになる。
③但し書きはないのか?:
イ)日本の対外純資産は410兆円あるが、これが、昨今の石油や食料などの輸入代金の膨らみで貿易収支赤字が遂に、今は11兆円黒字の経常収支の赤字転落などに繋がれば、最後には日本は純資産を食いつぶし、家計・企業の金融資産の余裕である900兆円が海外に流出し始める可能性はある。遠い話だが。
ロ)高齢者が死んでいくと貯金はどうなる?・・・これは基本的に大丈夫で、遺産相続で家族が引き継ぐのと、相続税で国が吸い上げるが、国全体で減ってしまうわけでない。
ハ)あと、少子高齢化で、高齢者への年金給付が細る分、高齢者が貯預金減らすことで、上記900兆円の金融資産余裕が今はまだ増え続けているが、将来細る可能性絵はある。しかしその分くらいは、以下④の日銀保有国債を増やすので、ある程度埋め合わせしていくという方向だろうか。
二)今、ゼロ金利だが、金利が2%位になると、1000兆円の国債、というか少なくとも日銀の500兆円保有の部分以外の500兆円の2%、年10兆円は雪だるまになるので、その分は割り引いておく必要がある。
④一方、既に実質やっている日銀がお札を刷って国債を買う「財政ファイナンス」だが、今くらいのペ―ス(年間数十兆円程度)でこれやっても全くハイパーインフレなんかにはならない。ちゃんと政府が日銀の刷ったお金での資金を投じる対象の物資・サービスの供給が見合う範囲でやるからだ。
⇒ 以上の通り、国に貸す人(家計・企業)の金融資産の余裕から考えると、若干の日本の対外経常収支赤字化のリスク(そう高いリスクでないが)などを考えても、かつ、上記の金利問題を考えても、今の1000兆円の国債は倍近くまでは、日本の中でちゃんと回る・消化されるだろう。
⇒ つまり、国債は2000兆円位までは財務省の言うような「破綻危険」の兆候の出るようなことにはならないと思う。
⇒ そして、その範囲であれば、国債は、別に返済・償還なんてしようとせず、トヨタみたいにずっと「抱える借金」でいいのだ。国民も急に返されても困るだけだから。
⇒ そして、その範囲であれば、国債は、別に返済・償還なんてしようとせず、トヨタみたいにずっと「抱える借金」でいいのだ。国民も急に返されても困るだけだから。
【3】最後に、ならば、ドンドン国債発行してジャブジャブ使おう・・・という向きには、さすがに「待て!」と言おう。財務省が、だから気にしている通り「国債をまだ倍以上にしてもいい」等というと、与野党、各省庁から「お金、頂戴!」と手が伸びてきて、歯止めが効かなくなるからだ。・・・という意味では、世界で唯一の、日本の財務省の「国債は返すもの」思想はナンセンスでも、「際限なく発行してもいいもの」でもないのだ。
⇒ だから、あと1000兆円くらい枠があるかも知れないが、大事に大事にプランニングして使っていくべきである。しかし、財務省は「国債、減らせ」の一点張りだから、そういうプランニングは全くない。全くの都度都度になっている。忌々しい。
・・・以上、書いておこう。