★今朝の日経に、100人の社長アンケートの結果で、原発や石炭火力への考えが載っている。(コピー、下に。)
◆ 社長らの意見が政府施策に大きな影響力を持つのか? 結局、選挙で投票する国民の意見の方が影響力があるのか?といった問題はあり得るが、これらの社長意見に出ている傾向が、多少とも政府施策に影響し得ると想定して、ひと言コメントとしておこう。
◆ という前提で結果を見てみると:
(1) 既存原発の再稼働は7割が支持。これは前からこんなもんだろう。
(2) 原発新増設: 2022年の同様調査(以下の二つ目のコピー)では60%が「新増設すべき」と回答していた。
・・・ところが、今回の調査では「新増設すべき」が55%くらいに微減している。・・・しかも、今回、「新型炉で」と「新型炉でなくても」に分かれているが、「新型炉で」と限定している人が半分以上いて、新型炉でない既存原発タイプでの新増設には慎重派が多いようでもある。つまり、今回の調査からは、もしかしたら、日本の社長さんたちは、日経の表題のように「過半が支持」というよりも、「新増設には、依然よりも より慎重論が少し増えている」との解釈のほうが妥当なのかもしれない。
・・・2022年の調査の頃は、まだ「新型炉」云々の議論が少なかったが、その後、日本政府の広報でも、SMR(小型炉;色々問題あり得る)や、あるいは、夢の又夢であっても核融合にも触れるようになっているので、一般の社長さんたちの意識の中では、却って「既存タイプの原発のままの新増設ではアブナさそうだから、慎重に」、、、という考えが むしろ増したのではないか。
⇒ 【私見1】: 政府は、SMR、更には夢の核融合などに言及してしまい、却って「既存」のはアブナイという印象を醸し出した可能性がある。「既存」「既存」と言う既存軽水炉でも、新型ではかなり新しい安全設計になってきている、その既存軽水炉の進化の話をこそ、政府はもっとすべきだったのではないか??
◆次の、石炭火力: 「残す」は2割のみ。2022年の比較調査がないので、分らないが、恐らく、これも、そう増えてはいないのではないか?
1)まず圧倒的に言えることは、社長の多くは、自分の会社が「グリーン」イメージで見られたい、「グレー」イメージは回避したい、という思いが強く。実態はさておいても、自社が再生エネなどに積極的とのイメージ、そして「石炭火力」なる現代の魔女狩りの対象になっているモノのには「否定的」という見られ方をしたいという、かなり強いバイアスがあろう。・・・それが社長個人のアンケートでも出ると思う。
2)そして、社長と雖も、エネルギー問題への肉薄度の高くない「普通の人」も多いので、ベース電源が原発だけになる多大なるリスクへの理解も高くないのであろう。
⇒ 【私見2】: 今、日本の電力は3割が石炭火力、原発は6%程度、以上がベース電源。そして、しょうがないから、3割もを「ミドル」のLNG火力に依存している。(つまり中東・ロシアなどに依存するLNGのリスクを抱え込んでいる訳だ。)
・・・「石炭は今後止めるべき」と言う社長は、恐らく、長期的には、いま石炭が占めている3割を、原発再稼働・新増設と太陽・風の再生エネで置き換えればいいという単純・ナイーブ発想なのであろう。
・・・政府は、もっと、これらの社長さんたち(そして国民)が分かるように、以下の点を啓蒙すべきであろう。
1) ベース電源が原発だけになると、2011年の福島事故のような事態が起こった時に一旦原発ゼロにせざるを得なかった、あの「原発への一点集中リスク」になる。それを皆に想起させ、かつ、あの時は休止老朽石油火力の再稼働で埋めたが、もうそれは出来ないこと。ベース電源は、原発と石炭に分散していてこそ、安心ということ。そして石炭は低炭素型の歩みを強めており、そのうち、LNGの放出炭素より、石炭火力の方が遥かに炭素が少なくなること、以上も啓蒙すべきだ。
2)そして、何度も私が書いてきている太陽・風は、一定以上は全くダメという点の啓蒙。①日本ではもう場所なし、②発電出来ない時の補いの石油火力で却って炭素を増やす、③膨大な送電・系統投資が要る。