★今朝の日経新聞報道にある通り、植田日銀は、当初からの方針通り、政策金利の「正常化」に向けた漸次の金利率引き上げ調整を基本方針にしている。・・・但し、今夏7月末の0.25%への「第一回」引き上げが、急速な円高、その結果の株価暴落をもたらし、私などは「それがどうした?!」だったのだが、株屋さんなどからの日銀批判も噴出したからだろう。一応、利上げは世の中を見渡して慎重に行う、との態度を示している。
◆ しかし、私は、漸次でもいいから上方修正をすべきと言ってきている。1)長期ゼロ金利体系による経済・社会の歪みの構造的是正と、2)短期的には円安継続の庶民への苦境への対策としてである。
・・・ 国民民主党は減税を唱え、そして減税の結果の経済浮揚を期待しており、「財政出動効果」というやや古いモデルでの政策提案をしている。その立場から、折角の減税による財政出動効果が、金利上げにより効果減殺されないようにという政治的な趣旨を言っているものだ。
・・・しかし、アベノミクス・黒田日銀で、世界でも異様な超低金利・マイナス金利にしたが、マイナス金利にまでしても、大した投資促進がされなかった。ダメな企業は金利マイナスでも動かなかったのだ。アベノミクス・黒田日銀の超緩和の効果は、専らそれが、金融世界で円安をもたらし、円安が輸出企業と国際的大企業の業績好転をもたらしたことに尽きると言ってよいほどだったと思う。⇒ だから、国民民主が懸念するように、政策金利を多少上げても下げても企業の投資への水かけにも促進にもならないのが実態であろう。今や、金融政策は企業の事業投資に殆ど影響せず、ひたすらにマネーゲームの方の、特に円ドルに大きく影響するだけなのだ。
◆ 一方、日本だけ続く異様な低金利・ゼロ金利は、以下の二つの大きな問題を産む:
【1】長期的に日本の経済・社会の構造を歪め、色々なひずみをもたらす:
①マイナスの実質金利: インフレ基調になった今、インフレ率より低い金利体系では、実質金利がマイナスになる。一番、嬉しいのは国。国債金利負担が重くなるとか財務省は懸念の表情を見せてみているが、歳入の方もインフレ連動する部分が多く、利息負担がインフレに追いつかないのは、実質的に「ステルス増税」をしていることになり、借金の多い国・財務省としては「借り得」になるのだ。・・・一方で、年金を初めとする資産運用には大きな逆風になる。特に公的年金には大きな逆風になる。短期的には気づかれないが、長期的にはアウトになる。
② 政策金利の下方硬直性: これ、植田総裁も言及していたが、将来、本当に金融緩和策をとるべき局面が来ても、今以上には金利を下げにくいという、政策金利の下方硬直性問題があるのだ。金利をマイナスまで下げても、円安以外、何も起こらなかったのだから、黒田超緩和は、壮大なる無駄だったことにもなる。そして、それ以上、政策金利の引き下げは実質出来ないのだから、金融政策の裁量の半分を放棄していることにもなるのだ。これは、直ぐに何か大問題を起こさないが、やはり、政策金利は、そこそこプラスに「正常化」して戻しておくべきであろう。
③ゾンビ企業延命: 黒田超緩和は、もう一つ大きな副作用を残した。本来淘汰されるべき企業が、タダの金利に近い借金が出来て延命出来る歪みが、数ばかり多い中小企業状態を産み、今、賃上げ出来ない日本の中小企業という慢性病を産んでいる。これも、その都度都度では鋭痛を発生しないものの、長い目で見ると、日本の経済・社会を歪める、というか、既に歪めている。
【2】度を越した円安による輸入コストインフレでの国民の苦境:
・更に短期的に大問題を生じているのがこれだ。日銀が金利上方調整を渋るとなると、米国などが今後多少金利下げをしても、円安に大きく振れやすい構造があるので、円安が進み、或いは続き、エネルギー・諸資材の輸入インフレで庶民の困窮が続いてきている問題だ。国内的な猛暑での野菜高騰などにそれが重なっている。円安の増益効果を享受するのは、大企業中心であり、コストアップに苦しむのは中小・零細事業者と国民なのだ。
◆ 長期構造の歪み問題と、短期の円安苦境問題、この二つから、やはり、日銀は漸次でもいいので政策金利の上方調整をしていくべきと思う。国民民主党には考えを改めてもらいたい。 Nat