★今年も色々ここに書かせていただいてきたし、読んでお付き合いくださった皆さんにも御礼を言いたいが、年末にあたり、最後の振り返りをしておきたい。そして、今年も日経新聞への嘆き記事を色々書いてきたのだが、どうせなら、それで私の今年の締めくくりとしよう。
◆ 日本株屋新聞みたいな日経新聞だが、今日の社説(コピー添付)で「年末値としても最高値となる歴史的な1年となった。この流れを途切らせることなく、持続的に株価の上昇を期待できる市場へ磨いていかねばならない。」と書いて今年を終えようとしている。
・・・日経新聞から見て課題はないのか?というと:
1)「大きな課題は経営効率だ。・・・肝心の自己資本利益率(ROE)の改善につながっていない。」とROE向上を最初に持ってきてしまっている。あ~あ。
2)その後の方で「果敢な経営資源の配分が今ほど問われているときはない。事業を選別し、成長分野に積極投資する。」と教科書的に付記しているが、順序がまるで違うだろう。
◆ 日経新聞がそう出るなら・・・私は、5年前の年末との対比をしてみよう。・・・私の即席の比較表を添付しよう。
【1】まず、日経株屋新聞がお悦びの日経平均株価:
・・・2011年からのアベノミクスの結果、2011年に77円だったドル円が160円にまで円安になり、それを主因として、日経平均株価は2011年に1万円だったのが、今や4万円にまで上昇。まず、この大局観が必要だ。
・・・ここ5年で見ても、私の表のとおり、上昇を続け、1.69倍で4万円レベルになってきている。
【2】 株価上昇の主因:
・・・1.69倍の要素分解だが、私の表のとおり、企業収益の向上「EPSのアップ」1.52倍 X 企業収益の将来成長期待の指標である「PERのアップ」1.11倍=1.69倍 となる。
・・・PERは1.11倍しかアップしていないが、少しアップしているのは、東証とか株屋さんたちの「資本効率経営」とかに踊らされた企業らの株価が、その分改善したことも背景にはあろうが、所詮、米株のPERが平均23倍とかであるのに対して、日本のPERは16倍くらいだから、日本産業の成長力にさしたる期待まではしていないことを表す。
・・・結局、今の足元での収益改善(EPSのアップ)が株価を押し上げていることになる。
【3】では、「収益改善」の本質は何か?
1)今年は自社株買いなるものまでが推奨され、株数を減らして見かけ上のEPSを高く見せる運動まで流行ったが、それで全体のEPSが押し上げられたほどではないだろう。
2)EPSの「改善」は実際の企業収益の絶対値が膨らんだことが大きいのだろうが、その本質は何か?
① 日経社説は「脱デフレの機運が高まり、企業も稼ぐ力をつけてきた」からと決め込む。・・・コストインフレの世で、確かに、日経平均を構成するような大企業は値上げができて、企業によっては、インフレ以上の値上げ(一種の便乗値上げ)をしたり、大企業社員の賃上げをしたりしたところもあったろう。・・・しかし、日本経済の太宗をなす中小・零細企業ではコストインフレと賃上げ圧力で収益圧迫に晒されてきたのだ。・・・大企業中心の日経平均はそれを物語らないのだ。
② 企業収益への円安の寄与度の定量分析で、ここで引用できるものがないが、以下を書いておこう:
イ)日本企業の国内単体決算: 輸出比率の大きい企業(大企業に多いが)では円安メリット、一方、国内市場型(中小・零細はこれが多い)は円安苦境。
・・・日経平均を構成する大企業中心だと、円安メリットが少し勝つ傾向にあると思うが、日本産業全体では、円安苦が強い。
ロ)日本企業、特に日経平均構成の大企業、大きなグローバル企業の海外連結収益: 今や上場企業の連単倍率は1.1~1.2倍くらいだから、海外の連結利益が平均的には1~2割を占めていて、これが、円換算では、 5年の間に44%も膨れた計算になっているのだ。これは大きい。・・・要は日本企業の国内の収益力が横ばいで低迷でも、海外の連結利益が計算上膨れているだけという企業が多いのだ。・・・そして、それは、庶民の日本国民の生計を潤さない。株を持っている人の資産を押し上げるだけだ。
ハ)ということもあって、一般的に言わていることだが、三井住友DSアセットマネジメントの分析によれば、ドル円レートが1%円安方向に変化すると、日経平均株価は約1.3%上昇する傾向があるとあり、それで暗算すると、44%円安では57%株価上昇に繋がるという計算になる。ここ5年の日経平均の上昇率69%アップにも符号する。
⇒⇒ 以上から、私としては、日経新聞のお悦びの日経平均株価のアップは、その本質において、大半は、円安主因と考えるのである。
⇒⇒ しかも、円安の原因は、2011年からのアベノミクスで77円だった円ドルが160円にまで円安に大きく振れたこの13年間、その本質において、終始一貫、日本だけが異様なマイナス金利、ゼロ金利をやってきたことにあるのだ。
・・・だから、株価上昇の本質的原因を、日本企業の本質的収益力向上だとするような立論、日経が書いているような「脱デフレの機運が高まり、企業も稼ぐ力をつけてきた」からというのは、美化し過ぎもいいところだ。・・・日本の異様な金融政策、それが超円安と見かけ上の株価高を産んだが、それはもはや弊害の大きい黒田日銀政策のもたらした、いわば「あだ花」としての株高なのである。
・・・しかし、それをそうと言えない、これが、日経のような御用新聞の限界だ。植田日銀でも、アベノミクス以来の異様なマイナス金利の弊害について述べているのに、日経は、13年間の自公政権の政策を非難することにもなる、「金融的な現象の円安への大きな振れが、見かけ上の日本企業の収益を膨らませ、日経株価の見かけ上の上昇に結果している(だけ)」と言った論説は張れないのだ。
・・・だから、年末に、替わりに、私がそれを言っておく。