★米ワシントン近郊の航空機事故に関連、トランプ大統領が、「実は事故は管制塔を司る連邦航空局(FAA)のダイバーシティ(多様性)運動に根があるのではないか」と言う発言をしたことが問題になっている。

・・・つまり、FAAが障がい者や非白人などの雇用・起用を重視し過ぎたことが、管制の専門的運営レベルを落とし、それが事故につながったのではないか、そして、そういう「多様性雇用」を推し進めてきたのは民主党の行き過ぎだろう、という見解だ。
<NBCニュース> NBCニュース記事
◆しかし、しかし、上記NBCニュースの詳細解説を見ると、もう少し根は深いかも知れないと思う。
・・・同ニュースによると、今回の事故以前から、トランプは、FAAが障がい者の雇用・起用に注力し、また「白人比率が多すぎる」としてその是正を主張してれきたことに、強い疑問を呈してきていたことが窺われる。
・・・即ち、トランプは、事故以前から、民主党的な「人員の多様性」の重視が、米国のレベルを下げているという強い危機感を持っていたとも思われ、そう言う所に、今回の航空機大事故だから、「それ見たことか!」と指摘しているのだろう。そして、記者に「FAAの多様性プログラムが事故の主因とまだ解明されてないのに、どうして、そういうのか」と問われたのに対し、トランプは「It's common sense.」と答えている。まさに、トランプからすると、民主党の頭勝ちの人たちが、常識・良識的な世の運営を歪めていると強く憤っているのが背景であろう。
・・・要は、今回事故が、FAA/管制官の障碍者・非白人起用による質の低下によるものかは分からなくても、トランプは、世界・米国において、障がい者・少数者への過度の逆差別がものごとを歪めていると強く憤慨しているのだ。
・・・そして、これは大きい声で言いにくい懸念だから、大きい声で言う人は少ない、だから、トランプはそれを大声で言うのだ。
◆ これは、世界的に非常にsensitiveな問題だ。「障がい者、性的少数派、人種的少数派への不当な差別との戦い」 vs 「そのような運動の行き過ぎへの疑問呈示」 という構図だ。
・・・後者は一部の過激派以外は大声では言えないことだ。トランプは、そこに発生する不満に政治的に便乗するのが天才的にうまい。
・・・今回のトランプ発言は、そこだけ聞くと、トランプは「ヒドイ」「人格否定!」という印象になるし、また彼一流の「不規則発言」と思えるかもしれない。そして勿論、この事故の際に、これを言うトランプの人格は大問題だろう。しかし、しかし、これは単なる「不規則発言」だけではないのだ。トランプの確信犯的な問題提起なのだろう。
・・・そして、それはそのまま、Diversity, equity, and inclusion (DEI) を巡る、人類内部の極めて本質的な葛藤をモロに露呈している発言であり、深い難しい問題を含むことと捉えるべきであろう。
Nat
