6月ごろには、イランが核兵器開発に向けて「越えてはいけない一線」を越えそうということで、いよいよイスラエルが、イランの核兵器開発施設を空爆する可能性が高まってきた。同じく核兵器開発に走る北朝鮮からの至近距離にある日本では、「そのうち北朝鮮を空爆せねばならないだろう」というような声も気運も全くない。これは、単純にイスラエル人が好戦的である一方、日本人は今や平和ボケしているということなのであろうか?
北朝鮮の核ミサイルの潜在的な標的はどこか? まず韓国、そして距離はあるが米国であろう。日本は相手にしても得るところの少ない国だから、日本に向けられるシナリオもあり得るが、標的としての優先順位は低かろう。一方、イランの核兵器の潜在的標的はどこかというと、ダントツ圧倒的にイスラエルである。ここにイスラエルの人が、本気でイランを先に潰さねばと考える根拠があるのであろう。
しかし私は、イスラエル人が敵国に対して抱く民族的意識の強烈さは、日本人には殆ど理解できないものがあると思う。偶々私はクリスチャンをしている経緯から、旧約聖書に記録のあるイスラエルの歴史にも少しは触れているわけだが、それからして、イスラエルの人たちは、かれこれ3000年以上の間、常に他民族との戦い、しかも時に奇跡的大勝利もしたが、むしろ迫害され抑圧されてきた長い長い戦いの歴史があると思う。しかも、その歴史を通じてイスラエルを導くエホバの神は、常にイスラエルを正義とし、最後にはエホバの神を信じない他民族を滅ぼしてきたのだと、イスラエル人は堅く信じている。エジプトからイスラエル人を奇跡的に救い出し、そしてカナンの地に帰還する際、他民族から土地を武力で奪取させてそれを正義としたイスラエルの守護神エホバ。イスラエル民族には、これが常についており、どんな攻撃をしてもイスラエルの戦いは「義」とされるのである。
このようなイスラエルの宗教、ユダヤ教の上に、それを乗り越えるものとして、「右のほっぺたを打たれたら、ひだりのほうも差し出しなさい」と言ったイエスが出てくる。しかし、これは一人ひとり人間の信じるところになっても、それをそのまま一国の国防政策には出来ない。キリスト教精神が土台にある米国も、いざイスラエルがイラン空爆開始したら、結局はそれに援軍するだろう。そして、その時、日本はただただ傍観することになるのであろう。
いずれにせよ、我々から見て、「空爆するときは絶対する」と豪語するイスラエルの人は、やはり理解を越えた好戦的人々にも見える。しかし、本気でイランからのミサイルを非常に差し迫った民族への危機と感じており、そして、それに先制攻撃をしかけることこそがエホバの神のみ心に適うと強く信じている彼らからすると、「平和的外交的手段で解決しましょう」と言うのみの日本人こそが信じられないほどウブな民族ということになるのだろう。このように全く違う民族の間にはコミュニケーションや共感は成り立たないのであろうか。そして日本人は、迫り来るイラン・イスラエル戦争の危機に対して、一体何ができるのであろうか。 Nat