安倍政権が、最低賃金を来年度、今の800円くらいから3%24円上げる施策を発表。中小商工業者の票を気にする自民党としては、3%24円でも思い切ったつもりだろう。

 一方、米国民主党は、サンダーズ氏のクリントン支援との引き換えで、連邦政府の最低賃金(現在7.25ドル)を15ドルと、倍以上に上げると発表。何時までにと書いてないので、日本の民主党の「1000円に」と同じで、政治家の受け狙いのリップサービスではある。しかし、安倍政権の3%とは大違い。

 最低賃金問題は、実は難しい。800円の賃金で貧困にあえぐ国民が実際におり、その人は賃金上げを交渉するパワーを持たないのだから、法定最低賃金を上げてやり、全国民が最低限の生計を出来るようにという考えは常にある。しかし、それを民間の私企業の賃金を強制的に上げることで実現するのがいいのか? それとも、マイナスの税金、つまり低所得者への給付金でするのがいいのか?という問題もある。

また、賃金を上げると、雇用が減るというのが、いつも出てくる反対意見である。

 この辺を踏まえた上で、なお、今の日本では、賃金の大きな引上げを図っていいのではと思う。

1.まず、給付金では短期施策になるのでもらった方にも不安があるが、賃金であれば、「自分で稼いだ」形になり、安心感が高い。

2.日本で、最低賃金レベルのバイトに依存している度合いが高いのは、専ら飲食・小売り等サービス業。業界全体で賃金を上げても、海外からの、より安いサービスに喰われることはない。むしろ、業界全体のサービス価格の上昇(デフレ脱却の好循環)になっていくはずだ。

3.零細製造業で、低賃金バイトでのみ細々と生き延びている処は、消えていくであろう。それは一時的には社会の不安にもなるが、そもそも日本では、消えるべき供給者が過剰に延命存在していることが、経済全体の競争力を阻害している面もある。よって、零細の退場で、長い目では業界の新陳代謝・再編に繋がっていくなら、日本の為になると思う。また、移行時期には、退場企業の失業者への政策配慮はしていいだろう。 

 以上の通りで、基本的には、もっと大きな最低賃金引上げをすべきと思うが、違うだろうか。  Nat