★今朝の日経に「福島1:汚染処理水ー迫る決断の時」なる記事が出ていた。保管タンクの置き場がそろそろなくなるのだが、全く決断も判断もないまま今に至っている。そこで、時々日経など報道機関が思い出したように「迫る決断の時」等と言うのだが、政府も東電も何もしないままである。

● 汚染水は、ALPSという通常の核物質を除去する装置で処理してきているが、三重水素(トリチウム;T)だけが除去出来ないので、「トリチウム水」(「T水」)と言われるものになって増え続け、貯蔵され続けているものだ。
● Tの出す放射線は極めて微弱であり、希釈されたTは、そもそも全国の稼働中の原発で、これまでも今も海洋水中に放出してきている。という位だから、そもそもT水は実質安全であるという意見が主流だが、「実は未だ不明の点もあるが・・」などの安全性論は、この記事の本旨には関係ないので、読者の皆さんも、その筋のコメントはご遠慮願えれば有難い。
● という具合に、 T水処理の本質的大問題は、科学には無関係に、風評も含めた住民不安などの「政治的問題」である。米国のTMI事故でも、少量のT水が出たが、放出への住民不安から、河川放出を諦め、大気放出処理をした。
● 日本政府の対応を調べると、2013年9月、12月に対策本部が「汚染水問題基本方針」を策定しているが、それ以降、殆ど進歩していない。T水については、その時点で思い切って海洋放出を即決定する道もあったろうが、完全に「判断の先送り」をした。その理由は書いてないが、(1)圧倒的に住民への政治配慮。そして、恐らくもう一つは、(2)地下水止水対策も今後の課題であったので、「どれ位のT水が発生するのか分からん」という先送りの言い訳があったから、「問題の先送り」で逃げたのだろう。
● 形式的には「T水は、T/Fで処理法検討する」とされた。それで出来たT/Fは、海洋放出以外に、地下・地層への処分、大気への放出法があることを整理し、最後には2016年6月に各方法の比較表を作って終わっている。
● 政府の原発事故の対策本部も、最後には17年8月に会議しているが、T水問題は、皆、嫌なので、会議でも全く議題にもされていない。
● そこでもう置き場がなくなる、お尻に火がついてきたが、だからと言って、今さら「やっぱり安全だから、海洋放出しましょう。元からそうしていたら良かった・・」は、政治的には選択肢たり得ない。かと言って、大気放出もこれだけの大量になると技術的にも難しい。
● よって、無理に置き場を拡げつつ、保管タンクを5年おき位に新品に取り換えながら、国民が呆れるか、忘れるくらいの長期間、ただただ保管し続けて置くしかなかろう。(Tの半減期は12年だが、風評、政治問題と半減期は関係ない。一旦、こういう政治問題になると、ほぼ永遠の問題になる。)

つまり「ちょっと先送り」したつもりが、「永遠の先送り」になってしまうという話。・・・これがT水問題の本質だろう。   Nat