★米英仏のシリア化学兵器使用への懲罰的な空爆。
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世界中のメディアが、さまざまな報道・評論をする中で、今朝の日経社説が、またぞろ何を書くかと思ってみてみたら、まず表題が「武力行使でシリアの混迷は解決できない」。そして最後には「重要なのは内戦の悲劇をどう終わらせるかである。」と書いていて、もう私としては、日経に対して気の毒な気分にすらなった次第。
●(1)まず、米英仏政権いずれも、今回の空爆を、日経の表題のように「シリアの混迷を解決」に向けたステップのつもりでやっていないのは、最初から明白。よって、そういう表題を掲げる日経がひとえに滑稽である。
●(2)そもそも米ブッシュ政権がイラク・フセイン政権(スンニー派)を安易に除去し、中東におけるスンニー・シーア、そしてクルド人などの民族勢力の均衡を、崩してしまって以来、米英仏等の西側先進国が中東の安定に無力になって久しい。米国も、オバマもトランプも、さすがに自国を攻撃したISだけは追い詰めないと国内政治が持たないから、中東問題はさておき、IS攻撃だけはしてきた。しかし、ISは中東問題において「あだ花」に過ぎない。米英仏は、元より中東のことは諦め半分なのである。
●(3)そういう中、トランプ政権になって、漸く、あだ花のISもかなり追い詰めに成功。しかしトランプ政権は国際政治に興味ないわけだから、ISが弱体化した今、中東の混迷は「他人ごと」でしかない。中東情勢は、もはや、イラン+シリア+イラク政権というシーア勢力と、特にシリア政権を後押しするロシアが完全に優勢。それに対して、米英仏は実質お手上げである。ということで、トランプ政権は、イラン憎しの姿勢は一応貫いているが、あとは、その場限り的に、イスラエルとサウジを応援してみたりしているだけである。
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という中で、冒頭のコメントに戻るが、米英仏は、そもそもシリアのアサド・ロシア勢力を放任している中で、「でもね、化学兵器だけはやめてね」という政治スタンスを採っているに過ぎない。
●という、悲しい現実の中で、もし日経が本気で、米英仏がシリアの内戦の悲劇を終わらせるべきと言うなら、その具体策を言ってみて欲しい。それなしに、一応社説を書くためにだけ、そういうことを言うのはやめてほしい。 Nat
★追記: アサドはもうほぼ、反政府勢力を軍事的に圧倒した今、なぜここで、米英仏を刺激する、化学兵器を敢えて使ったか? その点が、私は非常に気になっている。私は、まだその点の答えを持っていない。日経は、むしろ、そういう点に突っ込むべきであろう。
★追記の追記:あるいは、化学兵器さえ使わなければ、もう何やってもいい、、というポジションを、アサドとして獲得するためとも思えます。米英仏はどうせ、攻撃は何科の時に一回しかできない。なら、それを化学兵器で使わせてしまえば、あとはやり放題というわけか?