★またまた日経新聞のトップに、日本は生産性が低くて、実際の賃金が最低賃金に張り付いている事例が多い云々の記事あり。

●私が何度ここに書いても日経の人が読まないから改善しない。ただ、日経に限らぬが、皆さん、日本の労働生産性を単純に一人当たりのGDPで見て、世界でも生産性低いといい、恰も、日本人の働きがボロくて時間あたりの労働効率が悪い・ノロいと単純化した議論をしている。
●GDPは国民の産み出している「経済付加価値」をお金に換算して計算したものである。特に問題になっている日本の中小企業・零細企業の稼ぐ「付加価値」も、その企業の産み出すサービスなり製品が取引される価格に基づく売り上げから、その企業が外部から仕入れたサービス(電気代なども含む)・原材料/製品のコストを引いた差額である。つまり、その企業の労働者・設備(資本)などが産み出す価値に、顧客がどれくらいの「値段」を付けるかの金額である。
● 日本の中小企業のお金換算の「付加価値」が、企業の労働者の働く時間の割には「安い」のは大きく言うと以下の2つの要因からなる:
(1)日本の企業の産み出すサービス・製品の「付加価値」への市場Pricingが、構造的に非常に低いこと
(2)そして、もう一つが日経が言いたい、労働者の時間あたりの成果物がいまいち多くない(「ノロい」)ということ
である。実は、この二つのかけ算で、労働者一人あたりのGDPで計った「生産性」が国際的に低く見えているのだ。そして、より本質的に問題なのは(1)の構造的Pricingの低さなのだ。
●その(1)の「構造的に低いPricing」しかつかない理由は:
 ①とにかくプレーヤー(企業)数が過多。日本の企業は一つ一つが「小さななムラ社会」だから、ドライに閉めたり・売ったりされない。企業数が多すぎて、過当競争になっている市場が多い。
 ②日本の「儒教的秩序」から、お客様のほうが供給者よりエラくて、低価格を平気で強いる文化がある。
 ③サービス・役務は「ただ」という文化があり、なかなかいい値段を払ってもらえない。
 ④その結果、皆、安い価格で経営が死にそう。一方、死なないように、自民党が世界でも異常に安い最低賃金に据え置いてきたり、また、アジアなどの外国労働者を「移民解禁」しないフリしつつ、留学生扱いで大量に導入してきて、低価格を低賃金で誤魔化して支えるという悪循環をしてきたから、である。
● 一方、(2)の日本の労働者が、いわば「ノロマ」かも知れない理由は:
 ①一つは、ドライな雇用ではなく「ムラ社会」であることから、長時間、ムラの為にダラダラ仕事するのが当たり前という文化があること。上下関係も儒教的で、下は下僕化しやすい。
 ②もう一つは、確かにIT化含めた作業合理化が遅れていること。ただ、これも、「ITみたいな道具に走ることなく、気合いで運営」みたいな日本文化が陰をさしている面あり。
● だから、日経が論じるべきは、まずは(1)の経済・産業構造・雇用文化などであり、ただただ、低賃金温存で地方の中小零細商工業者を温存する施策しかしてこなかった自民党の無為無策政治についてである。
● 韓国は、強い中堅・中小企業の裾野が全くない中で、最低賃金だけ急速に上げたので、経済大失敗となった。しかし、日本は違う。まず企業過多問題を、自民党のようなゾンビ温存型の政治ではなく、規制緩和、業界の新陳代謝促進、そして廃業企業からの失業者への適切な安全ネットと転職支援制度、これから始めることで、日本を「進化」させないといけない。・・・しかし、もうすぐ結果の出る、今回の選挙では、そういう予兆は全くないままとなろう。このままでは日本はダメだ。  Nat