★★福島原発の「汚染水」(トリチウム水)の処理問題。
★私も何度も書いてきたが、いよいよ海洋放流に進めるかどうかの瀬戸際みたいで、またまた色々な評論が出てきているから、ここで改めてひと言。
● 「科学的な意見」として、トリチウム水は他の稼働中原発で一定以下濃度を前提に海洋放出しており、また、そもそもトリチウムは自然界にもあるし、福島事故原発からのトリチウム水も、最初から海洋放水していても、全く問題なかったはずとの主張もある。
● とすると、福島の場合、事故直後から発生したトリチウム水を、全く問題ないのだからとして、直ぐ海洋放出始めていたら、こんなことにならなかったとも思える。しかし、東京電力は実際にはそうせず、地上タンクに保管始めた。しかも、東電自身が「汚染水」と呼んで保管始めたのだ。「汚染水」として保管始めたら、それは、ほぼ永遠に放流させてもらえなくなるのは当たり前である。「即、放出」か「永遠に保管余儀ないか」この二択に近い話であったと私は思っている。
●では、東電がなぜ「汚染水保管」を選んだのか?
(1)他の稼働中原発から出て来るトリチウム水は、冷却水、要はお水に中性子が当たってトリチウム水に変化したものである。自然界にあるトリチウムで水を作ったものとも変わらない。
・・・ところが、福島の「汚染水」は、先ずドロドロ溶融の炉心を通り抜けた水が大量の放射性物質で「汚染」されたものを、まず保管、その上で、除去できないトリチウム以外の放射性物質を除去した後の「除去後トリチウム水」であるという違いがある。出来上がり結果は、他原発のトリチウム水と実施同じでも、感じは大違いだ。譬えていえば、水洗トイレの下水から汚物除去して飲料レベルにまでした水みたいなもので、もはやウンコは微塵もないと言われても、飲む気がしない、それみたいなものだ。
・・・その上、放射性物質を除去したと言われた「除去後のトリチウム水」に、実はまだ放射性物質が残っていた事例も報告され、「まだウンコの残った飲料水」的な疑心暗鬼を生んだ。
・・・東電も直ぐに海洋放流をしたかったであろうが、そうする前に、①放射性物質の除去、更に、②トリチウム規定濃度以下への希釈、この2段階の処理が必要で、だから、東電は先ず「汚染水地上保管」を始めざるを得なかったのだ。
(2)しかし、上記の2段階をあっと言う間にやって、すかさず、海洋放出する手もなかったではない。
・・・しかし、東電はそれもしなかった。2段階処理の為に一旦地上保管を始めたら、即、2段階処理しても、反対の声が上がるのを知っていたからだ。なら、その時点で、速やかに反対の声に対処していれば、早期の海洋放流が出来ていたかもしれない。
・・・しかし、東電は「反対の声への対処」も先送りした。敷地一杯にタンクが並ぶまでは、問題先送りしたのだ。
●以上の(1)と(2)で、結局、東電は、自ら「汚染水の永久保管」の道を選んだことに等しい。
・・・そして、敷地一杯になってきた今、漸く、地元の漁業者への「風評被害」対策に乗り出している。しかし、もうかなり遅い。
・・・ここで、相当額のお金を払ったら、風評被害は政治的に解決できるのか? それとも、お金での解決が進まず、更なる保管の時間を要することになるのか、それとも、米国のスリーマイルで結局(少量だったからだが)、地元反対で川ではなく、大気放出させられたのと同じ道筋にしかならないのか、まだまだ、分からないと私は見ている。
・・・それというのも、結局、東電が自ら選んだ道なのである。
Nat
