★日本の武器輸出を制限する「防衛装備移転三原則」について、ウクライナなどの軍事支援の場合には、殺傷力のある武器の輸出・供与も認めるかどうか?との議論が、政府・与党内で始まった。報道
◆ この件に関し、当面、私が今時点で書いておきたい事項は以下だ:
・・・報道では『防衛装備移転三原則の運用指針では、「殺傷能力のある武器の輸出先は日本と共同で開発し、生産している国に限られている」とある。』と書いている。そこで、「運用指針」(以下リンク)を見てみたが、1.(2)項で、明示的に『「殺傷力のある武器」が米国などの共同開発先以外には出せない』とは読めない。運用指針
・・・しかし、2014年に安倍政権が、それまでの「武器輸出三原則」で原則完全禁止にしていたのを、厳格な条件が満たされれば、一部の周辺装備品くらいは供与することが国益に資する場合もあり、ということで、「武器」を「防衛装備」と言い換えて、三原則を内閣決議し運用指針も定めた。その経緯からして、「殺傷力のある武器」を除くという趣旨を込めたのであろうとは推察される。・・・ただ、肝心の「殺傷力のある武器」は禁止ということが明示されてないことに、本件の難しさが象徴されている気がする。
【2】本日TVで見た報道では、世論調査で「殺傷力のある武器輸出の緩和に賛成か?」と問われると、3分の2くらいの回答が「反対」と言っているようだ。
・・・しかし、世論調査の常だが、本件、国民に「真の判断」を問えるところまで、論点が煮詰まっていないのではないか・・・と感じる。
1)まず、憲法9条の下、長らく武器輸出を禁じてきた趣旨は何か?
・憲法9条で、基本的には武力放棄しているが、専守防衛の自衛隊だけは持つことにした日本だ。
・そういう日本だから、軍事大国、武器大国にはならないポリシーがある。だから、たとえ同盟国や友好国が武力行使中の場合でも、そこに日本製の武器供与まではしないことにしてきた。そして2014年の安倍政権の決めた最新の方針でも、日本がウクライナに供与したようにヘルメットと防弾チョッキなどの供与に留め、日本の三菱重工製の戦車などの供与まではしないというのが日本のあり方となっている。
2)しかし、既に日本も、ウクライナにヘルメットと防弾チョッキは提供した。一方、欧米各国は、ロシアに不当にも侵略されているウクライナの防衛戦争の支援のために、種々武器を供与している。G7で「武器供与はポリシーで出来ません」と唯一言っているのが日本だ。
・・・ここで選択肢は二つ:
① 「日本は平和憲法があり平和主義だから、たとえウクライナ向けであっても日本の武器は出せません」というのか?
② 「日本製の武器は専ら日本の専守防衛・自衛のためにのみ作っているものだが、ウクライナ防衛のためなら、例外的に供与しましょう」というのか?
・・・この二つの中でのチョイスだ。
3)ただ、ここにもう一つ要素が加わる。日本の武器メーカー、三菱重工などの “後押し”のために武器輸出を認めるか?だ。三菱重工など日本の武器メーカーは、自衛隊にしか供給しない。はっきり言ってマニアックでありガラパゴスだ。しかし、日本の防衛力強化のためには、三菱重工などの武器を輸出も出来るようにして、その供給力をレベルアップさせることが、日本の防衛強化に繋がるという考え方はある。・・・しかしこれは、かつての大日本帝国時代の日本の軍需産業の復活を想起させ、抵抗のある向きも多いのだろう。
4)ということで、「ウクライナだけには武器の供与もありか?」との問いへの答えの判断だが、「ウクライナだけには」と言いつつ、ひとたび例外を設けると拡がり得る懸念はある。日本が軍事大国・武器大国に戻ってしまう最初のステップになるのではないか?という懸念もあり得よう。
【3】ということだが、前述の世論調査は、とても上記のような論点を全て踏まえた上での質問・回答とは思えない。「平和主義の日本が武器輸出解禁するのは、どうですか?」と、ぱっと聞かれれば、「反対」と答えるのが普通だろう。
・・・しかし、湾岸戦争でお金しか出さなかった日本への厳しい批判ではないが、いまウクライナ防衛戦争に対して、日本が自分を守るために製造している戦車などの武器を、ウクライナだけには回せないのか?と強く乞われている。それに対し、「日本のポリシーですから、ウクライナには出せません」と、突っぱね続けるのでいいのか?・・・という場面設定を明確にし、国民に問うて欲しい。各政党にも、そういう場面設定で、どうするのが日本の国益に資するのか、真剣に向き合ってほしい。そう思う。
Nat 

