★今朝の日経報道で、日本の個人金融資産が増え続けて2000兆円になっている時代にあって、その資産運用を手掛けるべき資産運用会社の、世界における規模を見ると、圧倒的に米系の巨大資産運用会社が上位を独占する、そこで、岸田首相が、日本の運用会社も米系などに負けないように運用能力を高めろと号令をかけているという話が出ている。思わず笑いそうになった。
◆ 半導体や電気自動車(EV)の製造産業の話であれば、米系、中国系などに大きく負けてしまっているだけではなく、今からでも「日の丸半導体」「日の丸EV」を育成しようという話は分らんでもない。
【1】国民の金融資産2000兆円というけれど・・・・・・・:
・右のチャートを見てほしい。確かに国民(特に高齢者)は、日本の将来不安もあり、とにかく「貯金指向」だから、毎年金融資産は増える一方であり、ついに2021年には2000兆円を突破している。
・さぞかし、世界の金融資産運用会社が日本に群がってきているだろう・・・と思うと、そうではない。
・2000兆円の中身を見てくれ。半分以上は現預金、次に大きいのが運用を兼ねた生命保険や個人で積み立てる個人年金保険だ。次に全体の1割の200兆円が投資信託。株式などは4%ちょっとの90兆円に過ぎない。・・・要は2000兆円の大半は、日本の銀行に預けられるか、日本の生命保険会社への生保・個人年金積立てに回っており、欧米で言う「投資資産運用」は200兆円の投信と90兆円の株式という小さな部分だけなのだ。
【2】では、お金を託された日本の銀行と生保はどうしているか?:
(1)銀行は、お金余りでどうしようもないから、日本政府の国債を買っている。日本の国債残高1000兆円の半分は日銀が持っているが、残り半分の多くは日本の銀行が預けられた預金で買っているのだ。
(2)生保は、積み立てられたお金を、やはりその多くを国債などの公社債に、そして、後を株式、そして外国証券などに投資している。・・・実際に運用しているのは、多くは自社グループ内の運用部門だ。・・・ということで、(1)も(2)も、専ら日本人の世界だ。
【3】僅かな部分だが、一応、1割の投信部分、4%ちょっとの株式部分もある。
・これは個々の国民が、いいと思う相談先、大半は、専ら日本の証券会社、最近は銀行の資産運用アドバイス部門、そういう所経由で、投信商品や推奨株式に投じられている。
【4】以上なのだが、上記のどこに、米系などの「巨大ガイジン資産運用会社」の出番があろうか???:
・そもそも日本人は、日本の元財閥系の銀行や生保の「ブランド」指向だ。三菱、住友・・・あるいは生保ではニッセイ以下。カタカナのガイジン銀行・生保は新しいもの好き以外には、敬遠されたりする。「ガイジン恐怖症」も一役買って。三菱・住友・ニッセイなら、運用成績は「地味」かも知れないが、恐らく手堅い・・・という、日系ブランドへの強い信頼。
・・・日経報道の筆頭のブラックロックなんてのは聞いたことない、という日本人の方が多い。
・三菱・住友・ニッセイなどというブランド信仰で、銀行預金し、生保積み立てをし、投信・株もそれ系の証券会社などに相談する、それが日本人だ。“ブラックロック”なんて余り聞いたことのない青い目の会社はぞっとしない。
【5】そういう信頼のされ方をされている日系ブランドの運用会社では、ブランドのイメージを維持する運用をしていればいい。運用会社のCEOは、勿論、親の大銀行からの天下りのジジで、運用については何も知らないかも知れないが、それでいいのだ。運用担当者も外資系と違って目論見書に個人名なども出ないが、その企業グループの「しっかりしたサラリーマン」が組織として、しっかりお金を預かり堅実な運用をしてくれれば、それでいいのだ。
・・・それを下手に、「プロいCEO」を社外、場合によっては米系から引っこ抜いてきたり、運用担当に米系みたいな運用成績リンクのボーナスを出す・・・なんてことすると、折角信用している「日本ブランド」の安定感が崩れてしまう。だからそんなことは、日本のブランド運用会社はやらないのだ。お客が求めていないのだから。・・・そして、もしお客で「米国流儀」の投資を少し入れたい人がいれば、ブラックロックでも何でも少し入れればいいことだ。日本流の日本ブランドを米国流儀化しようとしても意味ないし、上手くいかない。