★米国バイデン大統領と韓国の尹大統領のワシントン宣言 ――― 核弾道ミサイル搭載原潜の韓国寄港を謳った。報道ダウンロード
・・・米国の極東における軍事の実態には実質何の変わりもないが、韓国の前の文政権の政策が米日韓軍事同盟のアキレス腱になっていたのに対し、尹政権になって漸く本来の形に復帰・正常化したことの象徴として、まず、日本としても歓迎すべきであろう。
それにしても、同じ極東の対米同盟国の日本と韓国とで、斯くもスタイルが違うものかと思うので、その点をひと言書いておこう。
【1】まず米国から見て:
・米国は、日本にも韓国にも対しても、基本的には100%米国が米国の一存で管理運営する核の傘でカバーする体制としている。中国・ロシア・北朝鮮に対峙して、米国が極東における自らの拠点としている日本・韓国を米国の核の傘で覆い、もって米国の太平洋のおける利権・覇権を維持・擁護するものだ。
・米国は、2019年までロシアと中距離核兵器相互禁止をしていたせいで、中国のような(地上発射型)中距離核ミサイルを保有出来ていないが、極東の核の傘は、もっぱら潜水艦からの核ミサイル、あと爆撃機搭載核で構成する。前者、特に原潜は、長期間潜水したまま太平洋中に神出鬼没で、突然北朝鮮向けなどに核ミサイルを発射できる。だから、別に韓国なり日本の港に寄港してもしなくても、核使用の自由度は全く変わらない。つまり、そもそも原潜からの米軍核ミサイルは射程1万kmほどあるので、太平洋の真ん中から北朝鮮に向けて発射すれば済むことであり、それが韓国の釜山港に立ち寄るのは乗り組み員が上陸して嬉しい以外に何の意味もない。
・それでも、今回米国は①原潜の韓国立ち寄りありと発表、②核運用について米韓で情報共有するとの美しい話(核協議グループ)を発表したのは、ひとえに:
1) 漸く尹政権によって韓国が米日韓同盟に復帰した、それを歓迎してあげる政治的ジェスチャーが望ましいと判断した
2) 既に韓国国民の半数以上が「北が核持つなら韓国も」に走りつつあったのを、封じ込め、韓国と日本については、欧州のドイツ・イタリア・オランダなどとの核共有などは一切させず、米国が完全に牛耳る米国流の核の傘の体制を今後とも維持しようとしているためである。
⇒ 従って、①「米原潜の釜山寄港あり」は全く軍事的無意味だが、韓国人を安心させ韓国人が間違っても「核武装!」などと言わないようにするため、② “核協議グループ”は実際には情報共有のフリをするだけであろう。(但し、表向きの「米日韓 核抑止協議体」は発足することになっており、それで、中国・ロシア・北朝鮮に睨みを効かせる。)
【2】日韓のスタイルの差:
・以上からすると、今回、一見、日本よりも、韓国のほうが米国の核の傘の対象としては、一歩二歩、米国から「上の扱い」を受けているかのような見えるかも知れないが、本質的には以下であろう。
(1) 日本は、そもそも米国からして核の傘の対象国としては「大変、いい子」である。
・国内の左翼勢力に対しては、歴代の自民政権が「非核三原則」(「持たず」、「作らず」はさて置き、何と「(米国にも)持ち込ませず」も!)を掲げて、左翼勢力を制御、それでいて、実際に米軍が日本領土内に持ち込むことに対しては、「頼むから、黙って勝手にやってくれ!」で実質完全黙認してきたのだ。
・そして、核共有とか、「日本も核武装を」といったことについては、安倍元首相が一瞬「共有も検討課題」と言ったものの、自民内部でも自主的にそういう動きは「沈静」させてきた。
・・・米国から見て、忠実な僕であり、大変「いい子」である。
・・・核の機敏までは難しいが、前から一定の米日情報共有の秘密体制は既にある。
(2) これに対して韓国は、文政権がそうであったように、中国にすり寄ってみたり、昨年来の「韓国も核武装を!」論が国民的にも沸騰するなど、米国から見て、「おとなしく聞き分けのいい“兄”の日本」とは大きく異なり、ヤンチャの“弟”分が韓国である。・・・米国は、文政権の時代から、ヤンチャ韓国には手を焼いてきた。
・・・だから、まるで日本の自民政権みたいな「いい子」の尹政権が韓国に出来て、日本とも仲良くしたい久々に好ましい政権が出てきているから、うんと、褒めてあげようというのが、米国の韓国へのスタンスだろう。
・・・と言う具合に、おとなしい兄(日本)と、ヤンチャの弟(韓国)では、親の米国もそのアプローチが違うが、結局、共に強い親である米国の手の平の中でのことである。そして、こと安保・国防については、日本は米国の手の平の上でおとなしくするしかない。・・・日本は、非軍事面でグローバルサウスなどに独自の外交・協力する余地はある。しかし国防は、強い親の「いい子」でいるしか現実的選択肢はない。そして、今般、ようやくヤンチャ韓国も米の手の平に戻ったのである。色々、思う所がある人も多かろう。しかし、米の手の平での米日韓軍事同盟、現実にはこれしかない。  Nat