★次期戦闘機問題 ー 本日、輸出の条件付き解禁につき、公明党が正式に応じ、いよいよ新運用方針が正式閣議決定に進む。ダウンロード
◆ 野党は党により温度はあるが、産經新聞の報道では「立憲民主党や共産党が慎重な立場を掲げているのに対し、日本維新の会や国民民主党は比較的前向きな姿勢を示す。」とあり、予定通りである。
・・・一方、私は、昨日からの拙文の通り、本問題について、政府の説明は、恐らく意図的に絞られてきたとも思われ、そのせいで、国民の間には「何か急に、日本が自国製造の武器を輸出する、死の商人国家になるのか?!」みたいな不安感を持つ人も多いのではと懸念している。
・・・NHKニュースで学習院の憲法学の女の教授が「なし崩し的に武器輸出が解禁されるのは憲法上も疑義あり」みたいなことを言っていたが、NHKがそういうコメントを報道するということは、国民の間にそういう懸念が結構あるということではないか。
◆昨日も書いた通り、戦闘機は、現代では国防の要中の要で、戦闘機について、日本も自らが納得できる体制を確保することこそが、安保・国防の核心的課題になる。。。。しかし、その核心的課題の戦闘機につき、従来から同盟先の米国に完全に依存してきたのだが、以下のザックリ経緯の通り、日本は1980年代から次第に「米国依存のみ」体制では危ういとして、国産化路線を追及する路線に切り替えを図ってきたのである。
(1)F2の米日共同開発:
・1980年、日米では通商紛争が多発し、日本でも国防、特に戦闘機につき米国製のF16を米国から売ってもらっている体制ではリスクもあり、と判断。
・一方、戦時中にゼロ戦を開発した戦闘機エンジンの国産技術は既に日本国内では喪失されており、いきなり純粋国産は無理なので、米国の協力を得る形での米日共同開発したのがF2である。
(2)2035年以降に投入する、F2後継のFSーXの ”国産開発” :
・そして、ついに2018年の中期防で、次期戦闘機FS-Xの国産方針が決まる。しかし、純粋国産開発ではリスクもあり、結局「国産主導の国際共同開発」という方針になった。
・当初、何のことはない共同の相手として米ロッキード・マーティンを、という声もあったが、結局、英国のBAEシステムズになる。・・・その辺の本当の内幕はなかなか分からないが、既に米国は日本との共同開発に関心もなく、米国自身で模索する無人戦闘機など次々世代に関心が移っていたからともいう。
・・・その前からだが、露骨に言うと、米国は、日本には古めの戦闘機をバカ高い値段でふっかけることはあっても、日本にいちいちお付き合いしている暇はない、というスタンスになってきていたのだ。
・・・だから日本は、対米依存一筋をリスクと考え、国産要素を強めようとしてきた、その大きなステップが、英国との共同路線なのだ。英国とでは、日本と色々な意味でフェーズがマッチし、「共同」の意味が出て来るからだ。
⇒ 斯くして、次期戦闘機は、日英共同開発になった。2022年12月にそれで正式決定。
・・・しかし、米国からのおこぼれではなく、自主開発となると、日英が組んでも、巨額の開発費問題(1.5兆円とかいわれる)もあるし、開発リスクもあり、開発された戦闘機が一定以上の台数、世に出る前提でない限り、日英ともに現実的なものとならないのだ。
・・・そこで、イタリアも巻き込んではいるが、要は、自国向け以外に第三国への輸出で台数を稼がないと、日英伊の共同開発は、はなから成り立たないのである。それがイヤなら米国おこぼれ路線に戻るしかない。
◆ というように、2018年中期防で、米国依存だけからの脱却を決め、そしてパートナーに英国を選んだ時点から、今日の日本の「第三国への輸出解禁」は必須の絶対条件だったのである。
・・・しかし、確かに、日本政府が、その辺を国民に明確に打ち出してきたことは余りないと思う。
(0)一つには自民の連立の相手の公明党の説得が先決であったからだ。
(1)そもそも「対米依存からの脱却」ということを成程感をもって説明するためには、本当は露骨に「アメリカは古い戦闘機をバカ高い値段でふっかけて押しつけてくるだけだ!!」と言うのが、最も分かりやすいが、そうも露骨には言いにくいのが、全体としては米国べったり従属の日本である。
(2)そして日本がずっと踏襲してきて「武器輸出三原則」。要は、日本の国産の兵器(”大量殺人の道具”)は、自衛隊に持たせることはあっても、実質、輸出しない、即ち、共産圏や国連が禁止している国向けはもちろん「国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向け」の輸出もしないというのが三原則で、それが日本の平和主義の象徴と思ってきた人も多い。そういう国民に対し、「次期戦闘機を国産する国防メリットを考えると、次期戦闘機の条件付き輸出解禁は今では必須!」と、政府として正々堂々というべきであったが、それを憚ってきたと思う。
・・・だから、現象的には憲法学の先生が言うとおり「なし崩し的に」その辺を通そうとしているように見える面もあるのだ。また、国民への説明が弱く、国民の結構多くが「死の商人」イメージを抱いているままでは、公明党もギリギリまで難色示す必要にも迫られた。どうも、自民政権は、この辺の「正々堂々」説明姿勢が弱いと感じる。

・・・つまりだ、安保・国防関係では、政府は、言い訳的な説明ではなく、それこそが、わが国の安保・国防に資するのだ!!と正々堂々と説明すべきなのだ。・・・その上で、歯向かう野党が出て来るだろうが、姑息な答弁ではなく、本当に正々堂々と答弁するべきである。 

・・・つまり、今回の次期戦闘機計画は、日本が日本・極東の平和を守るために、「もう、米国からのお流れのバカ高い戦闘機に甘んじているのではなく、日本自身が自分で納得できる戦闘機を自分でグローバルに開発し保有する」という政策の重要な第一歩なんだから、政府には正々堂々と説明してほしい。
                    Nat