★ 台湾の頼新総統の「台湾と中国は互いに隷属しない」発言で、中国が猛反発、台湾を囲む軍事演習で威圧している。
・・・頼氏は嘗て「台湾独立工作者」を自称していた。しかし、近年は「台湾は既に独立国家であり、改めて独立を宣言する必要はない」と語り、今回の就任演説でも「既に独立国家」との認識を示した形だ。「二つの中国」という言い方では、更に挑発的になるが、実質「二つの中国」宣言でもある。・・・当然、中国は激憤する。
・・・しかし、何度も書いてきた通り、17世紀までは台湾は中国の埒外の島であったし、その後、オランダが支配、それを、1683年に清朝が征服してその後200年の間、一応統治した形だ。しかし、その後1895年、清は戦争で日本に負け、台湾を日本に割譲、更に戦後に蒋介石が支配する。となると、北京としては、19世紀以降の日本、蒋介石という経緯については如何にも悔しいのであろうが、北京が「もともと中国であったものを取り返す」と主張することには異論も多い。
◆そして、その異論の最たるものが、台湾の人たちの異論である。元々は台湾は台湾であったものを、清国に無理やり征服され、その後、日本になり、それが戦後、蒋介石政権に返還されたのであって、そもそも北京共産党政権は一切、台湾に関係ない!!という立場だ。そして、それには客観性がある。・・・だから、頼総統の言うように「元から、台湾は台湾」なのである。
◆ しかし、1971年以降、世界の大勢としては、今の北京政府の言う「一つの中国」主流になってしまっているのも事実だ。そして、それを主導したのが、他ならぬ米国なのだ!!
・・・1971年、米国のキッシンジャー代表が電撃北京訪問。実質、北京政府の中国との国交正常化、同時に実質、国連から台湾(中華民国)を“追放”したのである。国連の1971年の通称アルバニア決議:「中華人民共和国の合法的権利を回復させる」「中華人民共和国政府の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表であり、中華人民共和国が国連安全保障理事会の5つの常任理事国の1つであることを承認する」「蔣介石の代表を、彼らが国連とすべての関連組織において不法に占領する場所からただちに追放することを決定」である。・・・米国は、自国と台湾とのプライべ―トな取り決めとしては「1979年台湾関係法」で台湾の防衛支援する立場を維持しつつ、国連リーダー国としては、台湾を国連・世界政治から追放したのである。戦争を共に戦ってきた仲間の蒋介石台湾を見限って、、である。
・・・なぜ、このようなダブルスタンダードの対応をしたのか?・・・言うまでもなく、覇権を強めてきていたソ連に対抗するため中国と組みたかった。あと、後に鄧小平が明確化する開放政策で花開くが、人口約9億人の中国が今後米国の市場として重要度を高めていくとの見立てをしたのだ。そのため、中国と手を組み、一方で、人口1400万人の小国台湾は防衛しつつも、国連・世界政治の場からの追放を容認したのだ。そして、米国は、蒋介石の死去した1975年のあとの1979年に米中国交回復を正式に成立させている。ソ連に対抗するためと、大市場になる中国から利益を得たいということで、中国との関係を優先した訳である。
◆ しかし、21世紀になり、状況は全く変わってきている。
・米国が中国と組んだ大きな理由のソ連はとっくに崩壊した。
・中国が覇権を強め、更に、経済・ハイテックでも中国が米国の脅威になってきている。
・一方で、台湾はハイテック経済を振興し、世界に冠たるTMSC・鴻海などを擁するなど、米国の経済・ハイテックでも戦略パートナー化してきている。なんと、台湾はすでに一人当たりのGDPでは実質日本を追い抜きつつあるのだ。
・・・米国からすると、こうなるのが分かっていれば、1970年代に中国と手を組み始めるのは良くても、国連からの台湾の追放などやり過ぎだった、「一つの中国」問題でも米国は小ズルく実質ダブルスタンダードを維持してきているものの、今となれば、当時から、はっきり「二つの中国」にしていた方が、今ごろ米国の国策には資していたはず、というのが本音であろう。
・・・しかし、しかし、台湾は、国連から追放されて久しく、超強大覇権国家の中国が今「祖国統一」を強く打ち出す背景を作ってしまったのも1970年代の米国自身のエゴからなのである。しかし、もう1970年代には戻れない。永遠のジレンマのまま、どこまで今の「一つの中国」の「虚構」のままで誤魔化し切れるか?という問題設定になっている。
・・・永遠のジレンマというと、イスラエルとパレスチナもそうだ。米英の作りだしたジレンマだ。もう一つ、米国が作り出した永遠のジレンマが北京と台湾である。
・・・神さまから見ると、両方とも醜い人類の為せるわざであろう。 Nat