★苦悩の農中(農林中金)ーーーその②
・・・昨日、関連の日経記事に触れ、農協組織がその余剰資金を農中に集めて、農中に資金運用させ、そのリターンを農協組織への「お約束利息」(”奨励金”)として毎年還付させる、農協はそのお約束利息によって生き延びる、そのいびつな構造のため、農中は無理な運用を強いられる、という点について書き、本日の日経の続き(「下」)で、更にどこまで踏み込むか見極めたいとも書いた。
◆ 日経の「下」編では、冒頭に東北地方の元JA組合長のコメントで、農協が農中の資金運用益にばかり頼るべきでなかった、というのを引用しているのは結構だ。・・・そして、記事は、農協組織は実質赤字であるが、農中の資金運用で何とか成り立っている実情にも触れている。オーケー。
◆ 本当はだ、農中に無理させて、金融利益で何とかやっている農協の話をするなら、日本の農政にまで話が及ぶのが本筋であろう。
・・・ざっくり言うと、昨日もコメント欄で書いておいたが:
① 戦後の農地改革で農地は小刻みの小作農単位になったが、その後の高度成長期に社会の都市化・工業化で、転業してしまう農家が多い中、地方で高齢化しても農業継続している零細農家が日本の農業、という構図になってきているが
② 日本の農政は、徹底的に、それを保護・補助して延命させる方針、逆に言うと、企業参入・農地集約・合理化の道は閉ざしてきたのだ。
・・・その保護農政を実際に担っているのが、自民党農林族、農協=コメ兼業農家、農林水産省から成る「農政トライアングル」である。
◆話せば長くなるが、日本の保護農政は、国民に「食料自給率の維持・改善」なる、かなり欺瞞的な看板の元、零細農家を保護してきた。(注:何度も言う通り、食料だけ自給しても無意味。食料運ぶエネも、食料生産の肥料・飼料が殆ど輸入だから、それだけ言っても欺瞞なのである。食料は基本的に同盟国からの輸入。だから、国内農業は合理化経営の企業などに委ねて、あとは輸入するといいのだ。)
・・・保護農政の為、日本の農業は、国民の負担でのみ支えられるいる。「直接的な公費による生産者への給付」と「人為的な関税などでの価格吊り上げ(国民の食費負担)」の合計としての「農業保護国民負担(PSE)」で見ると、下のチャートの通り、農業者の受け取り額のうち、日本ではPSEが41%にも上り、韓国と並んで、国民の多大な支えによってのみ、日本の農業は延命されているのである。
・・・そして、その延命のあがきの一つの要素が、農中による無理な金融利益で赤字の農協を支えてきた、いびつな農協の構造なのである。