★日本の「企業ムラ」の今後の人事政策 - 戦後に根強く定着した終身雇用・年功序列体系が、どれくらい早く崩れ、欧米に近い体系に向かうのか??? ・・・これ、実は日本の将来を考えるのに非常に重要なテーマなのだが、案外、思い切った仮説を提示してくれる専門家はいないように思う。・・・私も、仮説提案を出すほどには確信を得られてないテーマだ。・・・そこで、ここで、賢明なる読者諸氏と問題意識だけは共有しておきたい。
◆ 日本の戦後に、世界でも突出的に広がった終身雇用・年功序列体系の「日本の企業ムラ」と、(欧州では類似な要素はあるが)、少なくとも米国流の企業の人事体系と何が一番違うと思われるだろうか??
・・・一言でいうと、日本の企業ムラでは「ジョブ非限定の雇用」、米国筆頭の米欧型では「ジョブ限定雇用」なのだ。日本が終身雇用・年功序列体系であることの、雇用条件上の最大の特徴が「ジョブ非限定」なのだ。
・・・つまり、日本の世界でも異様な新卒一斉採用だが、その大前提が「ジョブ非限定」。新卒の新入社員は「XXX株式会社」という「ムラ」の一員になる。ジョブは、最初は営業かも知れないが、次には企画だったり、あるいは途中から総務に回されるかも知れない。そして、60歳までそのムラのムラ人として頑張ってもらうために、「良きムラ人」になるための様々な新入社員研修なんかもある。更に昔で言うと、先輩との飲み会で、そのムラの価値観を吹き込まれたりもする。そして、日本の特徴として、ムラ人になるための採用だから、採用は、全社的に人事部がやるのだ。・・・これに対して、米欧の採用は  、営業なら営業の空席補充や増員のニーズが出来た時に、営業員の補充・増員のためのジョブ採用するのだ。その企業のムラ人になってもらうのではなく、そのジョブに限定された「ジョブ採用」なのだ。だから、米欧企業からすると、「新卒一斉X百人採用」などいう日本式は、企業側も学生側も、全く意味不明の採用制度になるのだ。
◆ その辺を全く分かってない日本人が結構いる。
・・・例えば、有名な勘違いは「日本の労働法制は厳しく解雇が難しい」という誤解。
・・・日本企業での解雇は実際難しい。しかし、労働法制は、どこの国でも不当な解雇を取り締まっていることには変わりない。「何が不当解雇か?」だが、それは専ら、それぞれの国の企業の人事体系で決まるのであって、法制の違いで決まるのではない。
・・・米欧では、特定のジョブ限定採用だから、そのジョブに向いてないと即解雇しやすい。雇用契約上もそうなる。しかし、日本は、ジョブ非限定採用だ。雇用契約には、ジョブは一切書かれてない。「ムラ人になる」と書かれているだけだ。だから、まるで仕事の出来ない奴でも、広いムラの中のどこかでは活用できるのではないか?という裁判所の判断になるので、よほど何にも使えないダメオヤジでないと解雇できないのだ。・・・だからだね、日本の企業ムラには多数の「働かないオジサン」がキープされるのだ。しかし、それも一斉新卒採用で優秀な人員を終身雇用で囲い込むための必要コストであったのだ。これまでは。
◆ ところが、ところが、日本ムラ社会の新卒採用社員に異変が起こっている。新卒新入社員が、直ぐ辞めるのだ。自分が想定したジョブと違うから辞めるという。企業の側からすると「あなたが30年、40年、当社のムラの中で色々な仕事をしてくれることを期待。まず、初年度はXX部から始まるだけ」と言いたいだろうが、その新入社員からすると「貴社のXX部のXXのジョブで、私はスキルを深めたいだけ」というように、企業を利用して能力を増やしたいと思っているだけ。そういう米欧型に近い若者が増えているようなのだ。
◆ もしも、そういう若者がドンドン増えるなら、人事部が毎年一斉に新卒採用し、研修でその企業ムラの価値観を植え付け、20年、30年と色々な仕事をローテ―トさせようとしているのと、全く、ミスフィットになる。・・・新卒一斉採用などアホらしくてやってられなくなり、米欧型の個別部門の欠員補充や増員を、中途採用で埋めていく体系に変わっていかざるを得まい。
・・・問題は、大半の企業の人事部では、まだそういう若者の変化は限定的とみなし、むしろ少子の時代で新卒の奪い合いだという認識で、却って一斉新卒採用の度合いを強めているのが実態なのである。
・・・結局、企業の人事部がもう遅れていて、世のトレンドについていけてないだけか?それとも、案外、今の若者でも、結果的に、そのムラに20年、30年いてしまう人が多いのか?・・・3年以内離職率のデータでは、直ぐ辞める若者が急増しているわけでもなさそうにも見える。images
・・・ この辺の実態が今後どう展開するのか? その読みが重要なのだ。そして、私も未だ確たることは言えない。しかし、人事の評論家みたいな人も大したこと言えてない。
・・・ということは、日本の企業ムラの将来を左右するだろう「若者のジョブ雇用へのシフト」の度合の予想という超重要な問題について、案外、誰も定見を持ち得てないということではないのか? そういう疑問を禁じざるを得ない私である。どうだろう???  Nat