★昨日の石破首相の所信表明演説、当然、ボロクソに言う野党はさておいても、各種報道でも「石破氏カラー封印」「具体性欠如」「紙の棒読み」と、えらく評判が悪かった。
・・・私は、別に石破サポーターでもないので擁護するつもりはないが、正直「まあ、あんなもんだろ」という感想しかない。
◆ だから、所信表明演説での石破カラーや具体性の欠如を論議する人は、そういうシチュエーションを余り分かってない人と思うが、唯一、この局面でのissueたり得ることは、裏金議員問題だったはずだ。(しかし、それも後述のとおり、就任時点で既に終わっていたのだが。)
・・・経済政策やら安保政策やら地方創生やらは、じっくり始めていけばいいのだが、裏金議員問題は、10月27日の選挙に向けてのことだから、どうするかが、今、今、今、問われている唯一のissueである。
・・・しかし、これも、石破氏が当選直後に、党内の政治力学が圧倒的に「早期総選挙」論であり、それなら「裏金議員公認」しかないことを瞬時に観念した時点でissueではなく、no choiceになったと思われる。
・勿論、党内でも「総選挙などせず、まずじっくり政権運営に」という意見もあったようだが、党内政治引力は圧倒的に「早期解散・総選挙」だったと推察する。だから森山幹事長が即、実質それを前提にしたはずだ。
◆ まず安倍派・二階派の不記載議員(いわゆる「裏金議員」)85人(注:うち衆議院51人)のうち、「処分された議員」こそ39人だが、「幹事長注意留まり」の45人を含めて、報道でデカデカと顔写真つきで「裏金議員リスト」として「晒し首」にされたのだから、ほぼ全員が次の選挙に重大な懸念を感じたことだろう。・・・以下の日経報道では、処分受けた39人のうち今回立候補予定は20名超とあるが、処分に至らなかった45人からは、その大半が立候補するだろうから、裏金晒し首にされてなお立候補する議員は70人はいることになる。(注:うち、今回選挙の衆議院議員は50人くらいか。)・・・そのほぼ全員が戦々恐々としているのだ。
・・・彼ら・彼女としては、もう晒し首は終わったので、ここから再起を図る。それには、当面選挙などなく「ほとぼりが冷める」のを待つ向きもあったろうが、時間をかけると別の心配が出て来る。裏金問題の追及を叫んでいた石破氏が、時間があれば、問題を掘り返し、更に最悪なのは、処分議員の公認をせず、新人候補を立てようとすることだ。
・・・これを封じるには、もう石破就任と共に即、解散・総選挙で、石破首相に「問題の掘り返し」も「新人擁立」もする時間を一切に与えない作戦が望まれたのだろう。そして、早期選挙なら、総裁選の報道で盛り上がった勢いに乗じる勝ち方があり得る、という期待だ。
⇒ 斯くして、党内では圧倒的に「早期解散・選挙」(即ち、裏金問題を過去に葬り去り、処分議員も公認)という路線がたちまちに主たる声となったのであろう。そこで、森山幹事長がそれを即断、石破氏の口をはさむ余地はゼロだったはずだ。
・・・森山氏の最大の殺し文句は、「裏金議員数十人の多くが落選すると自民党は終わる。なら、あんたの首相も終わる。新人発掘・擁立なんてしても、自民新人では負ける可能性高い。なら今解散して裏金議員の再当選にベストする、それも厳しいが、もうそれしか道はない。」だったろう。
◆ ということで、唯一、今のissueたり得た、裏金議員問題も、そもそも石破政権成立の10月1日の時点で、完全に決まっていたわけである。なら、石破氏に「変節」とか「公認?嘘つき」なんて言っても意味ない。それしか選択肢ないまま首相になったのだから。