★選挙に向かって、各党が政策を発表しているが「インフレに負けない賃上げ」については、自民も立憲も国民民主も、皆、似たような、いわば「対症療法」政策を掲げているだけという点では同様である。
・・・低賃金層への給付金支援といった対症療法の極致を除いても、企業の支給する賃金・報酬を上げさせるために各党が言っている「対症療法施策」例の典型は以下である。
1)「リスキリング、ジョブ型雇用の導入、労働移動の円滑化など労働市場改革」(自民)
2)「賃金上げした企業に減税」(国民民主)
3)「最低賃金1500円、正規雇用者を増やす」(立憲)
◆ しかし、しかし、何度も言うが:
①大企業・中堅企業が内部留保をため込み、投資にも労働分配にも回さないのは、経営ジリ貧で将来不安がある上に、報酬を大きく増やさなくても幹部・社員がその企業ムラから離職したりしないムラ社会だからである。
②中小零細企業では企業数超過多で報酬に回す付加価値が稼げてないからである。
・・・という、①は企業構造の根本、②は産業構造の根本に、それぞれ問題=病気があるからで、対症療法ではなく、その根本問題の改善そのものに直接効く施策で「病気」を直さないと始まらない。
・・・・②の中小零細企業分野では、ずっと業界内M&A促進策を述べてきたが、①の大企業・中堅企業は、もっと難しい。462724293_8514303008648861_7278322037050229873_n
【1】 自民の言う「 リスキリング、ジョブ型雇用の導入、労働移動の円滑化」:  そもそも企業がムラ社会でメンバーシップ型雇用をずっと続けている根本体質があるのだから、それを放置したまま、労働移動をヘルプする施策を言っても無意味である。皆、ムラから動かないのだから。
・・・メンバーシップ型雇用の体質改革に、一番近いのがジョブ型だが、今考えられているのは、メンバーシップ型を維持し、端っこに、専門家のジョブ型雇用を継ぎ足す案だ。全くやらないよりマッシだが、「マニアック専門家」と目される特別社員が加わるだけで、真ん中のムラ人たちには何ら変わりない。
【2】国民民主の「賃上げした企業に減税」:これもやらんよりマッシだが、そもそも賃上げをやらんでも皆、ムラを離れないのだがら、やる必要のない大企業か、やれる余地がない零細企業に、節税インセンティブだけ与えても効果は知れている。
【3】立憲の最低賃金1500円: とても払えない、払うと賃上げ倒産する零細企業が多いから、自民党は困って、年に30円とか50円しか上げてこれてない。立憲はそれをどうしろというのか?
◆ 大企業・中堅企業のメンバーシップ型雇用(終身雇用・年功序列・新卒一斉採用)という戦後日本の体系で、もう機能不全になってきていること、そのものにメスを入れていく施策が必要だ。
・・・私は、案として、東証などの企業評価基準に「メンバーシップ雇用脱却度合い」指数を導入しては、と言っている。
・・・企業トップの選任委員会のホンモノ度、中堅社員の成績考課・格付け効果における能力主義度合い(入社何年次という概念の放棄度合い)、中途採用が採用のコアになっている度合い、日本固有の退職金なる悪弊からの脱却度合い、等などだ。
・・・こういう指数を導入しても、直ぐに、株価に反映されていくこともないが、企業人のマインドを変えるには、こういう直接的な手法が必要と思う。政治家も、そうだったのか、と気が付く。
・・・国民民主の政策の中に、「人材教育を増やした企業を評価する会計制度」というのがあるが、少し、私のに通じる発想だ。
◆ 私がここで、そういうことを主張しているだけでは、何も変わらないが、日本企業の「ムラ社会性」=「メンバーシップ雇用」そのものに切り込む施策のサポーターが増えることを期待する。  Nat