★自公政権が過半数割れ政権になるので、にわかに、特に国民民主とのdealが注目されている。download
・・・そして、国民民主の「103万円の壁を178万円に上げる」策がdealの対象とか、にわかに取り沙汰されている。
◆私はこれまで、国民民主の政策の7割くらいには同調するが、と言ってきたが、残り「疑問の3割」がある。
・・・特に、自民も野党も、経済政策になると、どこもかかしこも「人気取りのバラマキ、財源は言わない」だ。
・・・国民民主も、同様で、「103万円上げ」、「賃上げされるまで消費税5%」などと言っており、他同様のバラマキである。財源は、他よりも少しは語っているが、積極財政やインフレでの税収増で・・とか言っているのみで、しっかりした財源議論は国民民主も避けてきた。
・・・だから、私は国民民主の経済政策については、概ね保留である。
◆ ただ、その中で、「103万円上げ減税」が自民とのdealでにわかに着目。だから、今日はそれへの私の問題意識を書いておく。
(1)まず「壁」について: 「103万円の壁、130万円の壁」とか言うが、103万円には実質ほとんど「壁」はない。130万円にはある。
・・・基礎控除48万円と給与所得控除55万円を足した103万円の基本的所得控除があるので、年収103万円までは所得税・住民税が掛からないということだ。
・・・しかし、年収103万円を越えて、例えば年収120万円になると、103万円の控除を引いた差額の課税所得17万円に、所得税5%、住民税10%の計15%かかり、2.6万円の税金が発生する。
・・・一方、130万円の社会保険料の「壁」はこうだ。妻とかの年収が130万円以下の場合は夫とか配偶者の社会保険でカバーされるが、妻の年収が130万円を越えると、突然、夫の社会保険から外れて、健保や年金料がチャージされる。つまり130万円超えると別世界になる。そこに「壁」があるのだ。他方、103万円の税金のほうは少し超えても、越えた分に課税されるだけだから「壁」はない。(正確に言うと、扶養家族控除の条件としての家族の年収103万円以下と言う意味では「壁」はある。)
⇒  よって、まず基本的に「103万円の壁」はない。主婦とかも年収103万円以下に抑える動機は乏しい。一方、130万円は厳然たる壁だし、壁以内に抑える動機は大きい。つまり、年収130万円超えて131万円になると、突然、アバウト15%程度、年に20万円とかの保険料を天引きされてしまう。
(2)では、国民民主の「103万円を、75万円上げて178万円に」は何か? 要は、所得の控除額を178万円にあげる、つまり、年収178万円までは無税にしようという提案だ。壁の取っ払いではなく、単純減税だ。 
・・・例えば年収170万円の人は、これまでは103万円を越えた部分の15%ほど、年10万円を税金で取られていた。それがゼロになる。これは庶民には大きい。
(3) では、これだけの減税だから、国中では大変が減税総額になる。共産党が7兆円とか試算して、国民民主の案は非現実と批判する所以である。
・・・しかし、国民民主はその財源を示していない。(その上、一時的に消費税5%とまで言っていて、結構調子良すぎる。他の野党もだが。) インフレ、積極財政での国の税収増、、と言っていて、それはあるかもしれないが、確定的「財源」とはいいにくい。
・・・私の思い当たる他の効果: 前述の通り、「130万円の社会保険の壁」は厳然とあり、多くの主婦が年収130万円以下に収まるようにパート収入などを抑えている。 もしかすると、今回の国民民主減税が実現すると、125万円の年収で税金を3.3万円払い、社会保険料ゼロの主婦が、もっと労働時間を増やし年収200万円くらいする気が湧いてきやすいかもしれない。何故なら、年収200万円になると、国民民主減税で税金は、年収178万円を越えた部分にだから、前の3.3万円変わりない、一方社会保険料は27万円になるが、手取りでは、以前は122万円、今後は170万円になる。・・・つまり、所得税が大幅減税の分、「壁」の突破ではないが、就労時間を大きく増やす気が高まる、という効果はあるかもしれない。共産党はその辺は見込んでない。
⇒ 上記試算例の場合、税金は増えない計算であったが、多くの人で就労時間がもっと増えると政府の所得税歳入もその分増える可能性はある。
◆ 以上、ごちゃごちゃと計算してきたが、国民民主の減税案は、財源や、庶民への影響を含めて、まだまだ分析が必要である、ということを、私は言いたいのだ。まだ、いいとも悪いとも決め難い。
・・・しかし、自民とのdeal話ばかりが先行してしまっている。
それは、余り良いことではないと思う。  Nat