★石破自民政権が、価格転嫁を促すための下請け法の改正をしようとしているようだ。
・・・下請け法自身は、1956年に下請けイジメを禁ずる基本法として制定された古い法律。その後、運用改正されてきており、この11月にも、60日以上の長い手形の押し付け禁止などの運用改正はする。
・・・「下請け」には下請け法上の狭い定義もあるので、下請け法の改正でこれを目指すのが適当かどうかとの基本問題もあろう。
◆ しかし、それより何より、問題は、報道から見ると、石破政権の考えている改正法の基本的中身が、まず「コストの価格転嫁を妨げてはならない」みたいな「思想」をうたい、更に「価格転嫁の協議の場を設けないといけない」みたいな「規範」をうたうのが精々で、それ以上、具体的な適正ルール作りは難しいことだ。
・・・最大の根本要因は、私が何度も言う通り、そもそも日本の特に中小企業は企業数も過多だが、更に本質的に、横同士の差別性のないまま、過当競争を、特に価格面で行ってきている、その根本的構造にあるからだ。・・・そして自民政権の施策は、そういう中小起業や零細企業を「保護」する施策のみで、産業内の再編・統合という痛みを伴うが日本を進化させる施策は、長らく嫌ってきたのだ。そこに根本的問題がある。長きにわたり最低賃金が世界最低水準に据え置かれてきたのも、自民政治の同様の根本体質からだ。
・・・売り手中小企業のコスト転嫁の交渉の実態も、大手の買い手が価格を買い叩く前に、売り手企業が「価格据え置きでいいです」と自分から言うとか、あるいはライバル企業が「ウチに切り替えてくれるなら価格下げますよ」とか言ったアプローチをすることが多いと理解されている。
・・・ならば、売り手が価格アップしようと言わないのを、無理に価格アップ提案させ、それを買い手に受けさせるのは、自由経済の基本原理に反する統制経済になる。
・・・しかし、自民党はもとともその本質は自由経済主義というより、前述の通り、地方の商・工・農・水・林の多くは零細業者を「保護」する政党であるから、実質統制経済になっても、保護を優先するのだ。・・・もっとも、民主党系も連合の票への依存体質にて、労組の利権の擁護が基本だから、国民民主と言えども「改革政党」とは言えない。
・・・しかし、価格転嫁問題は、統制経済で問題緩和するのではなく、痛みを伴っても、産業の再編・統合を進める諸施策(これまで私は具体的に税制関係などの提案している)で、産業そのものが自由主義経済原理を維持しつつ進化し、大手買い手に対して、自ら、より交渉力・提案力のある、強い、日本の中小企業になっていく、それこそが本来のあるべき方策なのである。
◆ 実は、これまでの政党では、業界内再編促進に少し通じる政策を言っているのは、自民党と維新であろう。・・・しかし、専ら事業継承支援、程度の差の税制支援程度で、私のように、M&Aに伴う売り手オーナーの譲渡課税の大幅軽減、統合後企業の5年間法人税免除とか、あるいは、信金など出入り金融業者への仲介料をはずむこと等、また、M&Aで却って雇用は維持されるケースが多いが、M&Aに際しての雇用のsafety netも必要だ、、、と言う、そういう思い切った施策にまでは行っていない。
・・・また、現時点では国民民主は、政策中に「下請け保護制度や事業承継制度など、中小企業支援策を強化します」というだけで、自民の保護的な支援策と余り変わらない。
・・・政党はみな、事業オーナーの痛みを伴ったり、移行に際して被雇用者の雇用不安の発生し得る業界再編・統合には積極的でない。なら、価格転嫁の統制経済法案だけでは、殆ど何も変わらないだろう。