★例のセブン&アイの創業家による対抗買収案
◆ 報道で、ちょっと前から、創業家側がBain等の米大手ファンドに資金拠出の打診をしている、とある。
・・・しかも、純粋Equity中心の話よりも、Debt系資金、いわゆるメザニンと言われる「高利貸し」の話をしているようだ。
1)Equity主体の話にならないのは、とりもなおさず、カナダACT社の7兆円台での買収案に対抗して、創業家が考えている8兆円程の買収では、買収した後の企業価値を数年で買った時の8兆円以上に増大させることは無理と誰もが思うからである。・・・つまり、端的に言うと「8兆円はバカ高過ぎる」ということだ。8兆円も出すと投資にならない。価値がそこから減るだけだ。ということだ。
2)そこで、もし米ファンドが出すとすれば、確かに、最近米ファンドも力を入れているPrivate debtの方になる。しかも、シニアdebtと違い、返済順位は低い劣後debtだが、高金利の高利貸しであるメザニン(DebtとEquityの中間、中二階の意味)、そして、場合によっては、たまたま事業が伸びて企業価値が向上するような場合には、Debtの出し手にも価値の上がったEquityが与えられるといった、「Equity kicker」ともいわれるupper potentialつき、要は高利貸しにEquityのうま味をまぶしたもの、それもあり得るだろう。
・・・しかし、私が話がまとまらないのではと思っているのは、通常のメザニンの場合、高金利の金利率が12%とか、サラ金みたいに高いのだが、今のセブン&アイでは、その金利がとても負担出来ないのではないか、と思うからだ。
⇒ ⇒ あのですね、セブン&アイの決算見てくだされ。ROIC(使用総資本に対する税後換算の営業利益)、毎年5%くらいしかないのですぞ。税後だから、税前営業利益での比率に換算すると、 税率34%として7.6%だ。
・・・要は、今の総資本6.6兆円にたいして7.6%の営業利益しか稼げてないビジネスが、更におおめの8兆円の出資・融資を抱える体制にして、その資金の多くの部分を金利12%とかのメザニンdebtで調達してしまっては、金利の返済だけで死にそうになると想定される。
・・・勿論、金利の負担は、通常、Cash金利部分とPIK(元本繰り入れ」部分で構成されるが、払える当てのない金利を元本繰り入れするのを呑むファンドはない。サラ金地獄、雪だるまになるだけだからだ。なので、本当にBainなどファンドとの間で、実効性のあるスキームが出来得るのか??? はなはだ疑問である。日経新聞ではファンドが「収益以上の意味」を考えるかも、みたいに書いているが、そんなもの考えにくい。
・・・尤も、セブンの財務情報によると、日本のセブンイレブンだけのROICは20%くらいもあり、更に海外コンビニは規模最大だがROICは5%くらい、そこに、平均のROICを大きく下げているのはヨーカドーなどのスーパ-事業だ。だから、スーパ-切り離ししし、セブンイレブンに純粋化する事業計画にするならメザニンも分からんではない。・・・しかし、創業家は創業事業であるヨーカドーに拘り、それを手放したくないからこそ、防衛買収をするのではないのか? なら、やっぱり成り立たない。ACTが買った場合、スーパーは切り捨てていくだろうが、それは大変合理的である。非合理は創業家であろう。