★毎日、本件につき書いているのだが、その続き。
・・・添付の日経報道などの通り、日鉄は:
・「自分らには何ら反省すべき点はない」
・「悪いのは全て米国側 ー 米政府とクリフス/USWの陰謀」
と強く主張している。
◆これに対して、私は、今日も以下を言わざるを得ない。
【1】米国の国家安全保障上の政治判断は、ひとえに米国の関係者の専管判断事項: 
・ 今回の米政府の買収阻止判断は、勿論、さまざまな米国国内政治の判断も伴うが、それも含めて一義的に米国側の専管判断事項である。
・USWなど組合は雇用の懸念を表明するだろうし、クリフスはUSSが米国資本であることの安全保障上のメリットを強く主張するだろう。しかし、如何にそれらにバイアスがあろうとも、彼等にはそれを主張する権利がある。彼等こそが米国社会の構成員だから。
・そして、日鉄は買収計画が、如何に米国の安全保障に資するか主張してきたし、生産・雇用維持関係も一定のお約束などをしてきた。それも、買う側の日鉄としては当然だ。
⇒ ⇒ しかし、しかし、しかし、結果として「日鉄の買収に米国の安全保障上の看過できないリスクがあるかどうか?」の、その判断は、米国政府の専管判断事項である。露骨な手続き違反がない限り、米国以外から、とやかく言われる筋合いはなかろう。
・つまり、今でこそ日鉄は生産・雇用を維持するように言っていても、長い間にはどう変わるか分からない、日鉄は所詮「世界での経営最適化」を図り「米国第一」の経営をしないリスクがある、とリスクを感じるのは、米国政府の勝手である。それを「生板の鯉」の日鉄が、如何に米政府の判断が気にいらなくても、訴訟までするのは筋違いも甚だしいだろう。・・・USSの立ち直りを、日鉄なしで、米国資本でやりたいと米国側が言うのに、「それはオカシイ」という日鉄のほうが「オカシイ」し、僭越の極みであろう。
・・・・だから、米司法が、日鉄には訴訟権なしとして、門前払いする可能性も結構ある。当然であろう。
【2】結局、買収が頓挫したことに日鉄経営陣の判断ミスなどは一切ない、、と開け直るのは如何なものか?:
・ビジネスは「結果」である。
・日鉄は多大な費用と時間を費やし、破談違約金の債務を負ってまで、この買収の計画・準備を進めてきた。
・それに対して、私を含めて、多くの人が「今の米国の政治・社会状況では買収強行は無理筋」と警鐘を鳴らしてきた。
・その中で、日鉄経営陣はそれを聞かず、「いかに買収が米国のためにもなるか」と、米側に ”上から目線” で説教し続けてきた。自分のロジックが、今の米国に通じると期待したのは勝手だが、期待に反して、米政府の反対に遭うと、今度は「自分らの経営判断ミスは一切ない」「悪いのは全て米政府らだ」と責任転嫁を図る。それはもうただただ、「プライド」「面子」のゆえでしかないだろう。(最もイヤな言い方したら「せっかく日鉄がUSSを助けてやろうと言っているのに、日鉄は却って害かも・・などと言う米国はケシカラン」みたいな、上から目線の要素がないでもない気もする。)
・・・日鉄という会社には、以前、私は仕事上でも大変お世話になった経緯もあり、歯向かうようなコメントは申し訳ない。しかし、お世話になった日鉄だからこそ、余りにもオカシイのは残念であり、恐縮ながら率直にコメントさせていただく。悪しからず。  Nat


※加筆: なお、誤解あるといけないので付言しておくが:
①日鉄のUSS買収そのものは、私は、2兆円もの対価が高すぎるというだけで、USSや米国にとっては大変メリットのあるプランであったはずと思っている。
②そして、バイデン政権のそれへの阻止は、愚かだと思うし、国家安全保障上も阻止は米国にとりマイナスだと思っている。
・・・しかし、それでも、そういう愚かな決定をする自由も権利も米国側にあり、日本はそれを「愚か」と思っても、訴訟までする権利はないのだ。・・・なのに、本件強行してきた日鉄の失敗だ、と言っているのだ。 〆



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