★今朝の日経新聞の一面記事で「先端人材が先進国から離散」なる記事がある。
・・・読むと、米国から、米国側の安全保障上の理由でインド人IT技術者がインドにUターン強いられた例、あと、トランプの反移民政策が今後グローバルなIT先端人材の米国入りの障害になる話は書いてあるが、「先進国一般から離散」の説明はなく、いまひとつ、趣旨不明だ。
『技術立国だった日本の土台は心もとない。米政策研究機関の調査によると20年の日本のSTEM分野の卒業生は20万人弱。インドネシアやブラジルを下回り、米国の4分の1、中国の19分の1にとどまる。人材戦略は国家戦略そのものだが、日本は言葉の壁が厚く、円安は報酬額の目減りにつながる。』(注:STEM=Science, technology, engineering, mathematics; 理系先端人材分野)
◆ 日本で、本当にSTEM分野の人材の卒業が減っているのだろうか。
・・・二つ目の添付のグラフ、主要37か国の大学等のIT分野の卒業者の推移。これを見ると、各国でIT分野の卒業生が増えているのがグローバルなのに対して、日本だけ減少している構図だ。
・・・「IT分野」卒業生の定義などの問題もあるかもしれないが、この構図が本当だとするとalarmingであろう。少し検証してみよう。
(1) 少子化で若者総数が減っている。そこで大卒数は年に1.8%減少に転じている。これに対して、添付のグラフだと、IT分野卒業生が日本では1.3%減少というので、日本のIT分野卒業生人数の減少ペースは、概ね、少子化による学生総数の減少によるものとも思える。
(2) しかし、しかし、他先進国では、グラフの通り、IT分野卒業生が年率2割前後とか増えている。学生総数がそんなぺースで増えていないだろうとすると、他国ではITを選ぶ学生の比率がどんどん増えている、ITへのシフトが起こっていることになる。逆に言うと、日本だけは、IT分野が好まれて選ばれる、ITへのシフトが起こってないということになる。・・・つまり、他国との「相対的」な比較において、日本のIT卒業生数は大きく劣後している可能性があるということだ。
◆ 何故か? ・・・・評論で良く言われているのが、日本ではITやデジタルと言っても「所詮、道具」という文化があり、文化系の管理人材がマネジメントとしてエラそばっており、IT技術者の多くが「IT雑用係」「3K的なIT労働」的に扱われている嫌いがある、だから、学生がそれを知っていて、IT系を選ばない傾向にあるからということだ。半分以上、そういう文化・社会的背景はあるだろう。
◆ そこで日本政府も、IT人材が弱い大問題を認識し、IT人材育成を課題に掲げてはいる。しかし、もしも上記の通り「文化系・管理系主流」の文化、「IT=道具」との位置づけが根強いのなら、日本社会・文化のその点、特に企業経営から革新していかないといけない。
・・・ そして、日経記事の趣旨に戻ると、日本人のIT人材が超不足になるとして、ではアジアなどからのIT人材が日本に来るか?というと、日本には「日本語の壁」と、そして最近は「異常円安」という大きな障がいがある。
・・・日本語問題はAI翻訳機でかなり改善するかもしれないが、円安は、何せ5年前に110円だったのが160円近くにまで異常円安になっており、且つ、その是正には日銀の急速な金利調整という皆の嫌がる施策が必要になるので、当分是正は難しかろう。
・・・更にそもそも、日本人のアジア人嫌い問題がある。
⇒ 以上を考えると、国内の学生からの国内IT人材も、海外からの人材流入も乏しく、日本だけ世界で取り残される懸念が強いことになる。
・・・ そして、これから必要なIT人材は、AIの伸長により、ITというと従来はプログラマーかと思われたのが、それは不要になる反面、AIの高度活用などマネジメント的なITが大きく必要となる。つまり、いよいよ高度IT 兼 文化系的センスのある人材が必要になるのだろう。しかし、もし日本では「IT=3K職場」とのバイアスが根強く、若者がそれに向かわないとすると、それは大変ゆゆしいと思われる。・・・ただ、STEMとITは同じでないので、その辺は分けて議論する必要があるかもしれない。
・・・どうだろう? 私は心配し過ぎだろうか???
Nat
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<加筆>



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<加筆>
(1) 理工系学生比率は、日本でも最近増えている。
(2) しかし、外国よりは、日本の理工系学生比率はまだかり少なめ。(以下、参照)
・・・なお、日本では理工系が少し比率増えているものの、OECDの中では理工系比率がなお低いという点、以下の記事がある。関連記事 〆

