★今日の日経新聞だけでも、本件に関係する複数の記事が出ているくらい、今、円ドルの行方は混とんとしてきている。
◆ まず言っておくが、これまでの何度も書いてきている通り、私は、今の円ドルの150~160円レベルはさすがに弊害の方が圧倒的に大きく、希望的には今後120円レベルにまで「修正」されて欲しいという意見の人だ。
・5年前に110円だったのが、いまや160円近い、超円安。
・その背景として、日本の国力の低下などという的外れなこと言う人もいるが、もうほぼ圧倒的に、日米金利差だけが背景だ。世界的なコストインフレが日本よりも欧米を強く襲い、欧米では対策として政策金利を急速に上げてきた。しかし世界で日本だけ(あとちょっと中国もだが)はデフレの延長線上にあり、ゼロに近い金利でさまよっているからだ。金融投機のマネーがドルを買い、円を売る。貿易収支動向とか、インフレ率の差の購買力平価とか、そういうのをぶっ飛ばして、円キャリーを筆頭とする金融投機が超円安を産み出してきたのだ。
・そして、その超円安の何が大きく弊害かというと:
(1) 国内経済的には、輸入品を中心にコストアップで中小企業の多くと庶民の生活を苦しめる一方、自動車など輸出型の大企業は濡れ手に粟で儲かってきた・・・日本経済全体では差し引き、プラス・マイナスで拮抗するくらいだ。
(2) 一方、大企業の海外事業拠点の利益の決算連結部分が円換算で水膨れし、見かけ上の好決算を産んできた。しかし、それは日本に住む庶民とかを潤さない。また、その結果、日経平均など株価が急上昇したが、それで嬉しいのは株屋さんと、4人に1人の株を持っている富裕国民だけなのである。
(3) 更に昨日から書いている通り、超円安は、インバウンド需要の増加ではいいのだろうが、日本で働こうという外国人が、タダでさえ少ないのに、円換算の報酬がボロイから、余計に来なくなっているという中期的な深い問題を産んでいる。
・今や「適正為替レ-ト」という概念は成り立たない時代であろうが、私は、上記から、今の150~160円レートは日本にとって害の方が圧倒的に大きいと断じている。
◆ では、今後、それが是正・修正されそうか?というと、残念ながら、そうではない。
(1) 米国で、もうそろそろインフレ対策高金利は修正して徐々に金利下げの動きになってきていたし、日本もそろそろ金利の上げ修正の段階ということになってきていた。それで、昨年夏には一旦、140円ちょっとまで修正されそうになっていたのだ。
・・・しかし、米では、インフレが案外根強い中で、①トランプ政策でのインフレ再燃懸念、②国債発行依存での市場金利高傾向、という動きで、またまた金利のアップの兆しすらあるのだ。
・・・一方の日本の日銀。昨年の7月に0.25%上げたら、株価暴落して、株屋さんにひどく批判されたら、もう日和見に転じてしまった。日銀の金利上方修正は超ノロノロにしかならない。
⇒ 日米金利差は、また拡大の方向となる恐れが強い。もっと円安になる恐れだ。
(2)一方、今日の日経記事などでも論じているが:
イ)トランプはドル高も金利高もお嫌いだ。だから、FRBに金利下げろ圧力はかけてくるだろう。
ロ)米国の政治の混乱を懸念する向きが資産のドル離れ(といっても向かう先は金やバーチャルしかないが)する可能性も指摘されている。
・・・しかし、この辺はどうなるか分からない。
◆ 結論的には、当面、円安、ドル高のバイアスはかなり強いだろう。日本で庶民や輸出のない中小企業の苦しみは強まろう。株ばかり高値持続かも知れない。そして、中期的なガイジン人材の日本回避は続くだろう。・・・それでも日銀はノロノロだろう。
・・・正月早々、見通しは暗い。  Nat